高速ランニングフォームのためのトレーニングメニュー(1)

黒月樹人 (KULOTSUKI Kinohito)@ 9621 ANALYSIS

「スポーツ解析」ブランチページへもどる

 高速ランニングフォームの動きを覚える

 次の手順ですすめて下さい。

1) ウォーミングアップとしてジョギングと準備体操
 このとき、左右のアキレス腱をしっかりのばしておいてください。

2) 地面ではじける連続ももあげ(スキップA)(水平スピードを殺して)
  20m ×(1〜2)本 
 「連続ももあげ」という運動を、地面で接地するときに、かかとを地面につけないように意識して、足首のバネを生かして、地面ではじけるようにして行います。かかとを地面につけないように意識しますが、実際は、ついてもかまいません。要点は、足首のバネが利用できているかどうかです。
 ももあげとしての膝の高さは、とくに注目しなくてもかまいませんが、ほぼ、腰の高さあたりです。このとき、ももを高くあげようとするのではなく、足を下へと動かすほうへ集中して、足首のバネで反発して、自然にももが上がるようにします。
 この運動を「スキップA」と呼んでおきます。
 このステージでは、できるだけ前進しないように、水平スピードを殺しておこないます。そうはいっても、何も前進しないと、ゴールまでの距離へたどりつけませんから、少しは前進します。1回のももあげにつき、半足長〜1足長くらいでしようか(やはり2足長以上だとスピードがつきすぎてしまいます)。これは、げんみつなものではありません。
 距離は、20mくらいから試みて、40mなどをためし、最終的には100mで行えるようにします。このステージでは、比較的短い距離でかまいません。長い距離で行えるようにすることで、力をうまく抜くコツが学べるようになります。
 反復回数は、1〜2回くらいでよいでしょう。
 かつて私は、この動きをマスターするため、100mで5本行うトレーニングを行いました。また、かつての教え子の一人は、100mで20本のメニューをこなそうとして、私もいっしょにやったことがあります。これだと、ほぼこのトレーニングだけで終わってしまいます。日数に余裕のあるときは、このような進め方でもよいかもしれません。


図1 スキップAの動き
(地面を蹴るときに足首に力を入れて、踵をつけないようにして、弾け跳ぶようにしている)

3) 地面ではじける連続ももあげ(スキップA)(水平スピードをあげてゆく)
  40m ×(1〜2)本 
 スキップAの運動を、はじめは水平スピードを殺してゆっくりと進み、じょじょに水平スピードをあげて進んでゆきます。
 上記の2)の運動では、身体重心直下を足でとらえるということを重視しています。同時に、足首のバネによって、できるだけ短い時間で、瞬間的に地面に力を伝えることを学んでいます。
 この、3)の運動では、このときの足首のバネによって、地面を「ひっかく」ことにより、前進する動きが生まれることを学びます。地面を後ろへと押すのではなく、もっと短い時間で、「ひっかく」ことになります。これらのことは、あえて意識しなくてもかまいません。2)の運動をしっかりとマスターし、少しずつ水平スピードが増えてゆく、この3)の運動へとすすめば、自然と、体は動いてくれます。
 ここで「ひっかく」と記しましたが、これは、外部から観察して、脚の全体的な動きを説明しようとしたときの表現です。トレーニングしているランナーの内的な感覚としては、「地面を真上から蹴る」とか、「身体重心直下ではずむ」というものになります。2)の運動からの変化は、わずかなものです。少しずつ水平スピードが高くなるようにしてください。

4) 地面ではじける連続ももあげからのスウィング(スキップB)(水平スピードを殺して)
  40m ×(1〜2)本
 ももあげ動作のあと、膝から下の足部分を前方へと振り出し、前方で足先が弧を描くようにして、身体重心直下へと振りおろします。この動きが、まだ、うまくできないときは、スキッピングによってではなく、歩行で動きをなぞってください。
 かつて私が中学生を指導していた30年ほど前のことですが、この運動でもっとも重要なポイントをのがして、たんに「形」だけを教えていました。これでは、この後のステージへと進めなかったわけです。
 30年ほど前の私は、地面へと振り下ろしたときの足首に力を入れておくということを、まったく指示することなく、接地時に、足首をやわらかくしておくようにさせていました。これでは意味がありません。「形」だけなぞれていても、「力」がうまく利用できないのです。
 上記の2)や3)の運動でマスターしたような、足首のバネを意識して地面を蹴ります。足を地面につけるとき、かかとをつけないように意識しておきます。実際には、かかとは一瞬地面につくようですが、それでかまいません。
 この運動を「スキップB」と呼んでおきます。
 この4)のステージでは、水平スピードを殺して、できるだけ前方に進まないようにして行います。これは、身体重心直下で地面に力を加えるということをマスターするためです。
 このようなことを実現するためには、上半身が少し後ろへと傾くことになるはずです。このステージでは、それでかまいません。
 前方へ振り出した足を、振り下ろす瞬間に力を入れ、その後、接地するまでの間、力を入れない状態があるということを感じ取ってください。力を入れる瞬間があれば、力を抜くところもあるのです。常に力を入れて動かしつづけるというのでは、地面に力を加えるという、もっともたいせつなところで、大きな力を生み出すことができません。





図2 スキップBの動き

5) 地面ではじける連続ももあげからのスウィング(スキップB)(水平スピードをあげてゆく)
  60m ×(2〜4)本
 上記4)のステージで注意したように、前方に降りだした足を、身体重心直下で接地するとき、足首のバネが利用できるよう、足首にしっかりと力を入れて行います。ここで力をゆるめてしまい、やわらかく接地してしまうと、30年も昔へと戻ってしまいます。何の変化もおこりません。
 地面ではじける連続ももあげからのスウィング(スキップB)を、はじめは水平スピードを殺して、あまり進まない状態から、後ろにやや傾けていた上半身を立ててゆくことにより、少しずつ水平スピードをあげてゆきます。
 このとき、自然と「高速ランニングフォーム」となってゆきます。
 地面を足がとらえるとき、足首に力を入れておくということと、地面を後方へと(比較的長い時間で)押すのではなく、(比較的短い時間で)はじくという感覚を忘れなければよいのです。
 地面を後方に押すのではなく、身体重心直下ではじくことができれば、このあと、キック脚は、自然と前方へと反発してゆき、後方へと巻き上げられるようにはなりません。
 足首に力をこめてスキップBを正しく行えば、自然と高速ランニングフォームへと移ってゆくのです。
 ここのステージは重要ですので、本数を増やして、よく反復してください。

6) スキップA → スキップB → 自然と水平スピードをあげて高速ランニングフォームへ移る
  80m ×(1〜2)本
 この運動も、ずうっと誤解されてきました。
 かつて、あるいは現在も、スキップAやスキップBの運動を何メートルかつづけたあと、ランニングへと移るトレーニングが行われてきましたが、このとき、表面的な「形」だけをなぞって、それらの運動の中にある、「力」としてのつながりが理解されてこなかったのです。最後のランニングでは、スキップAやスキップBとは何のつながりもない、地面を後方へと押すタイプのものになっているケースばかりだったのです。これでは何の意味もありません。
 上記の5)の運動で、足首に力をこめてスキップBを正しく行えば、自然と高速ランニングフォームへと移ってゆくということを理解していれば、このステージは容易にクリアーできます。

7) スキップA → 自然と水平スピードをあげて高速ランニングフォームへ移る
  80m ×(1〜2)本
 ここでは、スキップBの運動をとばして、かるくスキップAをして、身体重心直下ではじける感覚をなぞってから、高速ランニングフォームへと移ってゆきます。

8) スタンディングスタート → 高速ランニングフォームへ移る
  80m ×(2〜4)本
 これは「まとめ」のステージです。スキップAやスキップBの補助運動がなくても、ただちに高速ランニングフォームができるかどうか試みてください。
 もし、うまく動けていないと感じられるときは、上記の5)〜7)のステージへと戻って、まだうまくマスターできていないとこを強化してください。

9) クーリングダウン
 おそらく、足首まわりの筋肉や腱に高い負荷がかかっています。ふくらはぎもパンパンかもしれません。これらの部分のストレッチなどをやっておいてください。

 




図3 ガトリン選手のランニングフォーム


 この解析画像で注目してもらいたいところは、赤色キック脚の、GATLIN[ 35] からGATLIN[ 55] までのところと、青色キック脚の、GATLIN[135] からGATLIN[155] までのところです。


図4 ガトリン選手のランニングフォーム(部分)

 GATLIN[ 35]とGATLIN[135]は、キック足のつま先が地面に接地する瞬間です。地面あたりに描かれている赤い点が、身体重心直下点です。ほぼ1足長ほど、身体重心直下点より前にある状態です。
 そして、GATLIN[ 45]とGATLIN[145]あたりが、地面に最も大きな力を加えている、キックポイントです。まさに、身体重心直下で作用しています。
 このあとの、GATLIN[ 55]とGATLIN[155]では、キック脚の、膝から下の部分が傾いて、身体重心の水平移動の大きさを表現しています。ここのところは、ランナーとしては何も意識していません。このときのフォームは、結果的にこのようになるというもので、このとき、ランナーは力を抜いてしまっています。それゆえ、日本のランナーによく見られるような、後方上部への、かかとの巻きあげが起こらないのです。
 クセとして、かかとの巻きあげがおこったとしても、かなり小さな動きとなり、ただちに膝で折り曲げられて、前方へのスイングとして、GATLIN[ 45]とGATLIN[145]あたりでの、キックをおぎなうことになります。スイング脚の重心が振り子のように動くとき、身体重心からの鉛直線を通過するあたりでキックポイントを迎えることになります。





図5 高速ランニングフォームの動きをなぞったもの
2001年のころのフォームですが、これの右脚キックが高速ランニングフォームとなっています。
左脚キックも形こそなぞっていますが、runa.exeで調べたところ、加速できていませんでした。

 あとがき

 「高速ランニングフォームの動きを覚える」のトレーニングメニューは、ここまでです。
 1回のトレーニングだけでも、あるていどの動きは身につくと思われますが、体の運動をコントロールしている小脳に、しっかりとプログラミングされるためには、何度かの反復練習が必要となります。
 さらに高次なステージについての「高速ランニングフォームのためのトレーニングメニュー」については、あらためて、まとめようと思います。

 

「スポーツ解析」ブランチページへもどる