高速ランニングフォームのためのトレーニングメニュー(6)スキップA
スキップAはキック脚の伸張反射を生かして

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)@ 9621 ANALYSIS

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 はじめに

 高速ランニングフォーム(サバンナキック)に結びつくスキップAの細かな注意点を調べることにしました。
 スキップAという補助運動は、かつての「連続ももあげ」とよく似ています。私がやって撮影してもらった画像を見て、そのようなものだと勘違いしている人もいます。たいていは、私より速く走れるので、それでよいのかとも思ってしまうかもしません。しかし、そのような人のランニングフォームを詳しく調べてみると、キック脚の伸張反射という現象がうまく現れていません。そして、キック脚のバネをうまく利用することができず、スウィング脚によって加速しています。これでは高速ランニングフォーム(サバンナキック)のメカニズムをうまく利用してゆくことはできなくなって、やがて、スピードの壁にぶつかってしまうことになります。
 高速ランニングフォーム(サバンナキック)においてスウィング脚は、キック脚の伸張反射によるバネの動きとシンクロさせるため、キック脚の横を追い越すときに、動きのピークを合わせます。
 このような動きへとつなげるため、スキップAはキック脚の伸張反射を生かして反復するように心がけます。スウィング脚で重心を引っ張るのではなく、キック脚の伸張反射によるバネで(ほとんど自動的に、または自然に)押すということのための動作をクセづけるために行うものなのです。
 このあと、キック脚の伸張反射を生かすためのスキップAとはどのようなものかということを、ビデオ画像ではなく、それを解析したもので解説します。

 画像コマのステックピクチャー

 図1として、私(黒月樹人)が行ったスキップAの、ビデオ画像コマから構成したステックピクチャーを示します。このときのビデオ画像では右に向かって進んでいましたが、解析の都合上、画像の左右を反転させて使いました。よって、このあとの左右の色は、右脚や右手が青色で、左脚や左手が赤色ということになります。
 また、このとき、解析ソフトの都合で、各ステックピクチャーボディの身体重心が同じ高さになって描かれています。画像そのものだと分かるのですが、このため、上方向へ跳んでいる様子が分かりにくくなっています。しかし、これらのスキッブAのひとつひとつにおいて、ピョンピョン跳びあがっているのです。そのことは、キック脚のかかとがどのように動いているかということに注目すれば分かるでしょう。キック脚のかかとは、できるだけ地面につけないようにと足首に力を込めていますが、実際には瞬間的に地面にかかとがついたあと、伸張反射がうまくいったとき、ふわっと、かかとが浮くことになって、体全体が上に跳びます。スウィング脚の動きも、このときのタイミングに合わせようとしていますが、スウィング脚の動きだけで引きあげようとはしていません。


図1 スキップA 画像コマのステックピクチャー

 有効詳細フォームとキックポイントのフォーム

 図2は有効詳細フォーム(左)とキックポイントのフォーム(右)をまとめたものです。
 有効詳細フォーム(左)に描いてある重心は、上から、キック棒(キック脚と上半身)重心、全重心(黒色)、スウィング脚重心となっています。
 1と3と4においては、キック棒(キック脚と上半身)重心が上向きになっています。キック脚の伸張反射がうまくいったときは、このようになります。
 2ではキック棒(キック脚と上半身)重心が下向きになっていて、代わりにスウィング脚重心が上向きになっています。これでは高速ランニングフォーム(サバンナキック)へとつながってゆきません。


図2 有効詳細フォーム(左)とキックポイントのフォーム(右)

 図2を観察していると、1と3と4のグループと、ひとつだけですが、2とで有効詳細フォームのパターンが異なっているということに気がつきました。
 1と3と4のグループでは、キック脚が、まるで、足首で絞ってあるトレーニングパンツをはいているかのように、もともとは線であったステックで描かれています。膝から上の太もものところが、一様に太く見えています。このような太さは「動き」を意味しています。また、かかとのところが大きく動いていることが、かかとに厚みのあるシューズを履いているように見えています。
 これらの特徴は、2では貧弱な様相であり、1と3と4のグループでは、キック脚の伸張反射が起こっていて、このとき、腰のあたりが水平方向へと動くようになっていることを意味しています。それは、高速ランニングフォーム(サバンナキック)のメカニズムをなぞっていると考えられます。つまり、上へと伸張反射ではじけながらも、ちゃっかり水平方向への加速を生み出しているわけです。

 詳細重心解析

 次の図3〜図6は、4つのスキップAのフォームについて、詳細重心解析を行ったものです。
 スキップAでは、フォーム分類グラフにおいて、腰高ベータクランクキックか腰高ガンマクランクキックとなります。
 右上の「総合水平速度グラフ」に、水平速度だけでなく、実線などで加速のための力が描かれてあります。
 これらの下に、「TGB鉛直速度グラフ」と「SK鉛直速度グラフ」を並べ、これらにも、実線で加速のための力を描いています。記号の意味はT(上半身)、G(全体)、B(キック棒)、S(スウィング脚)、K(キック脚)です。


図3 詳細重心解析 (1)


図4 詳細重心解析 (2)


図5 詳細重心解析 (3)


図6 詳細重心解析 (4)

 1と3と4の「総合水平速度グラフ」には、加速力の様子が「爪とキャップ」のパターンになっていて、高速ランニングフォーム(サバンナキック)の加速フォームのときのパターンとよく似ています。
 また、「TGB鉛直速度グラフ」において、キャップパターンが現れています。これは、確かにキック脚の伸張反射により、鉛直方向への力が生み出されたことを示しています。
 これに対し、(図4)2の「総合水平速度グラフ」においては、爪のパターンが現れているものの、キャップのパターンが右のほうに離れており、ばらばらになっています。「TGB鉛直速度グラフ」においては、実線が下に凸になっています。その代わりとして、「SK鉛直速度グラフ」において、このときのスウィング脚の紺色のプロットパターンが上に膨らんでいます。これは、スウィング脚で引きあげようとしているということです。
 このようなことから、1と3と4のスキップAは高速ランニングフォーム(サバンナキック)の動きを強化するために役だっていると言えます。しかし、2のスキップAでは、キック脚の伸張反射が利用できず、スウィング脚でおぎなおうとしています。

 高速ランニングフォームに効果的なスキップA

 解析した4つのフォームの中では、4つめのものがもっとも効果的なものとなっているようです。まとめとして、この4つ目のスキップAのフォームを取りあげ、これについての注意点を述べます。


図7 効果的なスキップAの4コマ

 @は空中から地面へと落ちてくる途中です。このとき、キック脚の足首に力をこめておきます。
 Aは地面に接地した瞬間です。かかとを地面につけないように足首に力をこめて抵抗しておくのですが、かかとを地面につけないことにこだわりすぎてしまうと、キック脚のアキレス腱や筋肉群をうまく伸ばせないということにもなってしまうので、瞬間的にかかとが地面につくことを感じるようにします。ほんとうに一瞬だけですが、キック脚の足底は地面にぴたっとつくのです。このように試みることにより、キック脚の内部にある腱や筋肉が引っ張られ、伸張反射により、これらが縮み、大きな力が、ほぼ無意識のうちに生み出されます。
 Bは、このような伸張反射の結果として、キック脚のかかとがふわっと上がったところです。このときの、地面から受ける抗力を全身で受け取ります。このような力を受け取る前に、キック脚の力を緩めてはいけません。力を受けとることにより、体は上に跳ぶか、スウィング脚の動きとキック脚のクランク構造が組み合わさって水平へと加速されるか、それらの中間の動きが起こります。
 Cは、すでに空中へと浮かんだ状態です。


図8 効果的なスキップAの有効詳細区間(左)とキックポイント(右)

 図8の有効詳細区間(左)の2つのフォームは、図7のAとBに対応しています。濃い黄色はキック棒(上半身とキック脚)の重心で、黒色が全重心、(ここでは)青色がスウィング脚重心です。
 キック脚のかかとがぴょんとあがっているのですが、キック棒重心や全重心の変化は、水平より少し上向いた程度となっています。このとき、スウィング脚重心はほぼ水平に動いています。この動きの距離がやや長くなっており、スウィング脚の動きによって、全重心の向きを水平に近いものへとリードしています。スウィング脚の膝を意図的に上げようとするのではなく、膝から下の部分を振り出しています。
 キックポイント(右)のフォームは、AとBの中間くらいのものとなっています。GO前傾角が8度です。スピードの大きなランニングにおいても、このようなキックポイントのフォームを生み出すのがよいのです。SO前傾角は22度となっていますが、こちらの値は、私の個人的なクセなどに影響されています。スウィング脚の膝をもうすこし折りたたみぎみにするケースでは、SO前傾角は、もうすこし小さくなります。しかし、GO前傾角よりわずかに大きくなるというポジションは守っておくべきです。
 キック脚の伸張反射を生み出せる、効果的なスキップAのフォームをつくりあげるためのコツがあります。それは、スキップAの運動を100mを単位として行うということです。10mや20mではエネルギーがじゅうぶんにあって、スウィング脚の勢いで「連続ももあげ」をやってしまうかもしれませんが、100m続けようとすると、キック脚の伸張反射を利用し、地面からの反作用で膝などがあがるというものとするしかないようになるのです。反復回数を多くするためにも、距離は長めに設定するとよいでしょう。
 スウィング脚でリードするのではないということを強く意識するためには、ハーフスキップAを試みると良いでしょう。上の解析では、膝を腰の高さまであげないことを意識していますが、この膝の高さを、もっと低い位置で、ほんとうに、地面からの反発で上がるだけのものとするのです。このようにして、意識をキック脚の足首あたりの動きだけに集中するわけです。
 (Written by KULOTSUKI Kinohito, Jan 25, 2013)

 

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