高速ランニングフォームのためのトレーニングメニュー(13)
オフシーズンの短距離トレーニング

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)@ 9621 ANALYSIS

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 はじめに

 高速ランニングフォームの研究を始めてから10年以上経ちます。その間に、この研究の内容を実践的に、いろいろなランナーへとコーチしてきました。
 さいしょは東京で教えた高校生や大学生たちでした。それから、少し時間があいて、最近は、主に社会人となっている人々が多くなりました。
 指で数えられるくらいの選手ですが、いずれも、速く走れるようになっています。ときどき競技場で色々なランナーを指導しますが、みんな、すぐにフォームを改良して速く走れるようになってくれます。でも、げんみつに言うと、必ず、速く走れるようになるか、負荷量が多すぎて、故障で走れなくなるか、という2極になっているようです。私は後者のほうかもしれません。私が走ると説得力がなくなるのですが、教えることに専念すれば説得力はピカいちだと思います。それは、このホームページにおける解析内容がベースとしてあるからです。なぜ、このようにして走れば速く走ることができるのかという、力学的なメカニズムや、統計的な結果を説明することができるからでしょう。
 最近、ある中長距離ランナーに、その人のランニングフォームにおける問題点を2つ指摘して、次に示すドリルの、Walk Go on と Jog Go on だけを、ほぼ1時間かけて指導しました。すると、それまでの、ぎこちないフォームが、すっきりと洗練されたものとなり、エネルギーロスの少ない、スピードが出るものと変わりました。このとき私は、短距離ランナーだけでなく中長距離ランナーのフォームも直せるということを確信しました。
 トレーニングメニュー(12)で、(走の基本ドリルだけはうまいとたびたび評価される)私自身による見本画像をたくさん使って、(黒月式として編集した)「走の基本ドリル」を説明しましたが、思いつくままに構成しましたので、コーチングの資質をもたない選手自身には、どのように実行してゆけばよいのか、よく分からないかもしれません。そこで、とりあえず、高速ランニングフォームがまったく理解できておらず、(かなり抽象的な表現ですが)従来のランニングフォームで走り続けて、あまり記録が伸びないでいるランナーを意識して、全体的なトレーニングの流れをどのようにしてゆけばよいのかということを示そうと思います。
 ただし、実際に私がグラウンドでコーチするときは、対象選手のランニングを見て、修正や強化が必要なものを抜き出して指導するので、これほど多くのドリルを行うわけではありません。(40年以上の背景もありますが)とくにここ何カ月にもわたって、これらのドリルを自分の身体でテストしてきた私の場合は、何種類かを抜き出してやってみたり、一種類だけをしつこくやったりします。体力や時間の制限がありますから、実際のトレーニングでは、そのようになってゆくと思います。
 しかし、仮に(中高校生や大学生のように)ランナーを何年か継続して指導するとしたら、これらのドリルを中心として、タイムトライアルや走り込みといった、古典的なトレーニングも組み合わせて、必ず成果が生まれるように、もうすこし体系的に、かつ実践的にやってゆくことになります。

 オフシーズンの短距離トレーニング

[1] W-up & Basic Drill
 (a) Half Skip A
 (b) Skip A
 (c) Half Skip B
 (d) Skip B
 (e) Walk Go on
 (f) Jog Go on
 (g) Skip A Go on
 (h) Skip B Go on
 これらをジョギングやストレッチ体操と組み合わせて行います。距離や本数は、状況に応じて、いろいろ設定してください。

[2] Form Check Wind Running
 (i) Standing Start → Run
 (j) High Pitch Skip A → Run
 (k) Skip A → Skip B → Run
 矢印(→)の意味は「徐々に変化させる」という意味です。とくに、(j) High Pitch Skip A → Run では、ハイピッチスキップAをやって、突然切り替えて、自己流のフォームで走ってしまうケースが多く見られますが、それでは、このような運動をしている意味がありません。スキップAから「徐々に変化させ」てランニングへと変化することによって、スキップAで習慣づけようとしている、重心直下へのキックの感覚を、ランニングへと引き継がせようとしているのです。
 (k) Skip A → Skip B → Run でも、Skip B → Run のところの変化は重要です。前方へ振り出した脚の力をきちんと抜くことにより、膝下部分が伸びて、空中で「休む」感じのフォームになります。このときの、一見無駄なようにも見えるポーズは、キック脚重心水平速度dKを大きなものとするために、とても重要なものなのです。重心直下に接地するのではなく、もうすこし前で接地し、キック脚のすねを垂直に立てた状態で力を作用させるために、スキップB系統のドリルは欠かせないものだったのです。

[3] Special Drill (Kick Power & Level Speed)
 (l) Karate Power Kick Skip A
 (m) Karate Power Kick Skip A Go on
 (n) Long Step Skip A
 (o) Bow-type Hummer Kick Skip B
 (p) Bow-type Hummer Kick Skip B Go on
 (q) Long Step Skip B
 空手パワーキックの極意は、キックする瞬間にだけ、大きな力を生み出すということです。OZK選手に説明したところ、OZK選手は「剣道のメン(面)と同じ」だと補足してくれました。そのあと、OZK選手は、空手パワーキックの効いたランニングができるようになり、スピードも大きくなりました。
 空手パワーキックは、他人に気づかれないような動きとして組み込むのです。そして、どちらかというと、柔らかく地面を押します。走幅跳の踏切では、実際、そのようにして、大きな力を生み出しています。
 弓型ハンマーキックは、キック脚の膝を少し曲げて、弓の形にして、力を込めやすい状態で、高い位置から、勢いをつけて、地面に向かわせ、空手パワーキックのためのエネルギーを、より大きなものとしようするものです。地面に着くまでだけ勢いがあるだけではだめです。おそらく、高速ランニングフォームの「爆発的な加速」のときには、このような動きをしているものと考えられます。これは、エネルギーがたくさんいるので、あまり永く続けることができません。ここぞ、というときに使います。

[4] Power Check Wind Running
 (r) High Pitch Skip A → Dash (Karate Power Kick)
 (s) High Pitch Skip A → Dash & Run
(Karate Power Kick or Bow-type Hummer Kick)
 Form Check Wind Running ではフォーム(形)のチェックが中心でしたが、この Power Check Wind Running ではパワー(出力)のチェックを行いつつ走ります。もちろん、そのことによって、スピードアップします。
 私がグラウンドで指導するとき、もっとも重視するのが、ここのところの、Dash & Runが、きちんと使い分けられ、高速ランニングフォームとしての条件を満たし、スピードが乗ってゆくものとなってゆくかどうかということです。これは、言葉だけで表現するのがむつかしいところです。数多くのランナーのフォームを見て、それらを解析してきたデータが、動的なファイルとして、私の視覚的な感覚メモリーに保存されているので、そこのところを参照しながら分析するわけです。おそらく、「違う」「出来ていない」「OK」などの言葉を発しながら、具体的に何処がうまくいっていないのかを判断して説明すると思います。
 マスターズの棒高跳で、踏切から空中フォームについて、跳躍ごとにコメントしてゆく私のことを知っている選手なら、私が的確なコーチングをすることを実感していると思います。動きの大きな棒高跳に比べ、スプリントランニングは、これまで、分析するのは、最高に困難なものでしたが、これまでの研究により、いろいろな診断項目のリストを見つけることができて、実用的なレベルへと変化しました。
 ランニングフォームが良いものとなってきたら、スピードを少し押さえて、距離を長め(私の好みでは直線の110mでした)にとって、フォームを固めるための反復ランニングを行います。

[5] Power up Drill
 (t) High Step Skip A
 (u) Hig Step Skip B
 (v) High Knee Skip B
 (w) Savanna Jump
 (x) 1/4 Squat (+Weight)
 (y) Heal Raise (+Weight)
 (z) Rang Walk (+Weight)
 余力があるときには、このようなパワーアップドリルで負荷をかけて、身体への変化を促します。余力がないときはカットしてください。
 (w) Savanna Jumpとは、脚の膝をあまり曲げないでおこなう、両脚での、連続上下リバウンドジャンプです。60回跳ぶのを1セットとして、何セットか行います。慣れてきたら、腰にウェイトベルトをつけて行います。
 (x), (y), (z)は比較的静かな補強なので、アキレス腱などの腱群への負荷が小さいものです。このようなものだけを行うトレーニング日を設定して調整することがあります。故障中とか、補助練習(朝練習とか)に行うことができるものです。
 体幹を強化する腹筋や背筋の補強や、腕の補強も行ってください。

[6] C-down

 注意

 このトレーニングは「ランニングスピードを高めるための、高速ランニングフォームの基礎的な能力と動きを発達させるためのもの」です。200mや400mに必要な、特殊持続力としての、エネルギーシステムやリラクセイション能力の発達のためのものではありません。

 お知らせ

 私がトレーニングできる、土曜の午後か日曜日(や祝日)、水口スポーツの森にある、甲賀市陸上競技場へ来られる方で、高速ランニングフォームを学びたい人には、ポランティアで(無料で)指導します。
 ただし、私の都合や競技場の都合もありますので、そのような方は、事前に下記メールアドレスへ連絡してください。

   

 甲賀市陸上競技場の個人使用料は、時間制限なしで、一人一回、市内200円、市外400円です。もちろん、これは自己負担です。もっとも、競技場が使えないときは、周回オールウェザーコースやサブグラウンドで指導することもできますが、距離や路面の質は低下します。
 他の場所へ私が出向いて指導するケースでは交通費や日当を負担してもらうこととなりますから、とうぜんのことですが、有料です。
 また、ビデオで撮影したフォームの解析も有料となります。これまでは、知人・友人・練習仲間・研究対象として、私自身の生活のための時間を使って行ってきました。MRT選手の解析で、およそ50時間かかっています。平均的な時給で換算すると5万円以上の価格となります。それでもかまわないという方は相談してください。
 メールでの相談や質問は、もちろん無料です。こちらは、私の気持ちが動けば、それなりの対応をしようと思います。これまでにも、何人かの方から相談や質問を受けて、返答してきたメールがあって、たいへんな量になりますが、まったく未公開としてあります。まあ、このようなメールは「おしゃべり」の一種です。
 (Written by KULOTSUKI Kinohito, Oct 22, 2013)
 [おことわり] ここに、このように記していますが、これは2013年の状況にみあったものでした。2014年に私は、これまでとは異なる状況の仕事に就くことになりそうなので、土日にきちんと休むことができないかもしれません。おそらく、現場で直接ランニングフォームなどの指導をするというのは、かなり難しいということになりそうです。しかし、ランニングフォームの研究などは続けてゆきますので、これらの研究ページを読んで、トレーニングの参考にしてください。
 (Written by KULOTSUKI Kinohito, Dec 31, 2013)

 

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