TK選手のランニングフォーム解析

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)@ 9621 ANALYSIS

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 はじめに

 2014年1月4日(土)の午後、水口スポーツの森にある甲賀市陸上競技場(青い高速オールウェザー)でトレーニングしていたTK選手に、高速ランニングフォームの、新しく分かったコツを指導しました。
 新しく分かったコツというのは、カール・ルイス選手の技術に由来するものです。
 2013年末から2014年始めの「冬休み」(9連休)に私は、「なぜマイク・パウエル選手はカール・ルイス選手のように速く走れないのか?」というテーマのもと、カール・ルイス選手が速く走れる理由を、いろいろな解析によって調べていたのです。
 その、詳細な解析は、とても長く複雑なものとなりますので、解析ページとしてウェブで公開するのには、まだまだ時間がかかりますが、TK選手に説明した、カール・ルイス選手の、速く走るための技術の一つを、かんたんに言葉で述べると、次のようになります。
 「地面にキック脚を着くとき、足首まわりを硬くして、地面を弾く感覚」
 私の現地でのコーチングは、もっとおしゃべりで、いろいろなことを説明し、私自身でやって見せ、それをなぞってもらって、違いを説明して、いろいろと修正してゆくのですが、このことをうまく表現するのは無理というもの。
 今回は「指導前のフォーム」はなく、「指導後のフォーム」だけです。昨年末にも少し指導したので、これで2回目ということになりますが、いくらか高速ランニングフォームへと変化してきたようなので、ビデオ撮影して解析しました。

 TK選手のランニングフォーム

 次の図1はTK選手のランニングフォームです。画像をクリックすると、詳細データ解析の拡大ページへと進みます。それぞれのランニングフォームについての解説は、この拡大ページの解析図のあとに記すことにします。











図1 TK選手のランニングフォーム ( 画像をクリック → 詳細データ解析の拡大ページ )

 解析データ

 次の表1は、解析拡大ページの、キック区間の解析ページ(KICK)と総合解析ページ(ALl)にある、おもな解析データをとりあげてまとめたものです。

表1(A) TK解析データ(スピードとキック力)



表1(B) TK解析データ(角速度と角度)



 今回のTK選手の解析で、私がもっとも知りたかったのは、キック脚の足首のバネを利用した、「重心直下で地面を弾くキック」が有効に作用するかどうかということでした。カール・ルイス選手の技術に由来する「新しく分かったコツ」につながるものだからです。
 そのことは、上の表の、KOL, HOL, KOL/HOLの3項の値に示されます。
 これらの値についての解析図を使って説明します。次の図2はカール・ルイス選手の、図3はマイク・パウエル選手の(dK, KOL/HOL)解析です。そして、図4はKLO9選手(私)の(dK, KOL/HOL)解析です。カール・ルイス選手とマイク・パウエル選手の解析結果のパターンに比べて、KLO9選手のパターンは、KOL/HOL比がばらばらです。つまり、足首の(動的な)硬さがいろいろなのです。実は、これは、もっとも異質なサンプルです。このとき私は、アルファクランクキックやベータクランクキックで走ることを心がけていたから、このような分布になっているようです。
 ともあれ、速く走るための条件の一つとして、カール・ルイス選手のような、KOL, HOL, KOL/HOLの値に近づく必要があると考えました。
 そして、高速ランニングフォームを指導しているTK選手に、このような技術を説明し、意図的に心掛けて走ってもらい、それを解析したのです。そのあと私も、同じように、意図的に心掛けて走り、それを撮影してもらって(KTと記号化して)解析しました。
 それらの解析結果が、図5と図6です。


図2 カール・ルイス選手の(dK, KOL/HOL)解析


図3 マイク・パウエル選手の(dK, KOL/HOL)解析


図4 KLO9選手(私)の(dK, KOL/HOL)解析


図5 TK選手の(dK, KOL/HOL)解析


図6 KT選手(私)の(dK, KOL/HOL)解析

 これらの解析図から、データのプロット重心を取り出して、次の表2とします。

表2 各ランナーのKOL/HOLとdK



 私のデータでのdK値が小さいのは、全速度dGの値(走る速さ)が小さいためなのですが、dK/dGの値は、ほとんど変わりません。およそ0.6近辺です。
 KOL/HOLの値が1.0のとき、キック脚の膝下部分は、ブリキの一体成型のように、形を変えずにキックすることになるわけですが、そのようにコントロールしているランナーはめったにいません。1.0に近づくか、1.0から遠く離れるかということになります。KOL/HOLが0.2などのような、0に近い値となるフォームも、あまりよいものではありません。キック脚のかかとだけが浮いて、膝が前に進んでいないのですから、スピードが大きくはなりません。
 KOL/HOLの値は、0.5を越えて、1.0のほうへと近づくのが、効果的なキックのための条件となるようです。TK選手は0.54を生み出しましたが、KT(私)は、ようやく0.40へと(0.2あたりから)引きあげただけです。これは、私のキック脚の足首のバネが弱いためだと考えられます。
 データから、カール・ルイス選手よりマイク・パウエル選手のほうが、足首のバネは強そうです。しかし、マイク・パウエル選手は、そのバネを、鉛直速度を大きくするために使いがちで、ランニングスピードの向上には結びつかないのでしたが、踏切では役だっているというわけです。
 TK選手は、どうやら、このような技術を新たにマスターして、これまでの走り方とは異なる感覚を体験したようでした。スピード感を覚えただけでなく、キック脚の膝下部分に軽い筋肉痛を味わうこととなったようです。それはつまり、これまで使い切っていなかった部分を使って走れるようになったということなのです。そのような走り方に必要な筋肉群などが強くなれば、さらにスピードを増して走ることができるはず。しっかりトレーニングしてください。
 (Written by KULOTSUKI Kinohito, Jan 7, 2014)

 

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