コーチング (32)
2014アジア大会陸上100mオグノデ選手はおそらく空手ベータ走法

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)@ 9621 ANALYSIS

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 2014アジア大会陸上の100m決勝レース

 韓国の仁川で行われている2014アジア大会陸上の100m決勝レースをテレビで見ました。勝者はクェートのオグノデ選手で9秒93というタイム。予選や準決勝では、フライングをおそれてか、あるいは、後半に伸びてゆく自信があるためか、反応時間の遅いスタートでしたが、この決勝では、隣の山縣選手と同じくらいの飛び出しでした。前半のダッシュと中盤の加速のところは、横に走っている選手たちのフォームに対して、それほど違いはないように思えたのですが、後半に入ってからラストのところまでの、ほぼ100mの1/3くらいの区間の走りは、とても力強く、ハイピッチで、そして、キックポイントが重心直下に、とても近いものでした。
 このような動きを見て、私は、こう、つぶやきました。
 「オグノデ選手は 空手ベータ走法 で走っている(かもしれない…)」
 確認してほしいとおもいますが、これまでに私が説明してきた 空手ガンマ走法 ではなく 空手ベータ走法 なのです。それは、空手ガンマ走法に取り組んだ選手の、次の記録更新の可能性のために、あえて語らずにきたものなのでした。

 速く走るためのアイディアの要素

 「コーチング(31) 速く走るためのアイディア」でリストアップしていた項目に関して、次の要素にかかわる動きをしています。

 スキップB系の速いスウィングからのキック
 ワイドシザースフォームで接地のキック脚膝下部分をしっかりと立てる
 スピードが大きくなるにつれて中腰フォームから腰高フォームへ
 ガンマクランクキックとベータクランクキックの中間をねらう

 それらの後に私は空手ガンマ走法という項目を加えて、これについて説明していますが、オグノデ選手のラストの走りでは、ガンマクランクキックより、もっとキックポイントが前であることは明らかです。
 ですから空手ガンマ走法ではなく 空手ベータ走法 ということになるだろうと見なせるのです(ただし、良質なビデオ画像が得られていないので、げんみつなことは分かりませんが)。
 ガンマクランクキックは中腰ぎみに走ることによってスピード効果が増すのですが、ベータクランクキックは、このフォームの特性として、腰高でないとうまくスピード効果が生まれません。
 オグノデ選手はスキップB系の速いスウィングからのキックを心がけ、ワイドシザースフォームで接地のキック脚膝下部分をしっかりと立てており、スピードが大きくなるにつれて中腰フォームから腰高フォームへと変化させることにより、他選手よりも大きなトップスピードを生み出しています。
 まさか、日本語で表記している私のウェブページのことは知らないと思いますが、せっかく解き明かしている、「速く走るためのアイディア」が、日本選手にではなく、外国選手によって、たくみに表現されているということになります。
 おそらく、このような走り方で、より速く走ることができるということを、独自に見出してきたのでしょう。そうそう、ものごとの順序は逆なのでした。ガトリン選手やブレイク選手など、世界の一流スプリンターのランニングテクニックなどを、私なりに分析してまとめてきたのが「速く走るためのアイディア」だったのです。オグノデ選手は、その研究対象のグループに入ってきたということにすぎません。
 「コーチング(31) 速く走るためのアイディア」の幾つかの要素は、オグノデ選手の実例にあるように、スプリントランラングのトップスピードを高めるために有効なものです。しかし、そのような動きをするためには、ランニングフォームに対する意識をしっかりともつということだけでなく、そのような動きが、しかるべきスピード効果をもつために必要な、筋力などの基礎能力がともなっていなければならないということも、おそらく、重要なファクターとなるだろうと思われます。

 コーチング

 誰でも、そのように走れば速く走れるというものではないということです。まずは、「真下にキックしているのに、水平スピードが高まってゆく」ということを実感できる、空手ガンマ走法の感覚をつかんでください。もし、それがうまくコントロールできるようになったら、さらなるスピードアップのテクニックとして、レース後半での、空手ベータ走法へと進むことができることでしょう。
 (Written by KLOTSUKI Kinohito, Oct. 1, 2014)

 

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