短距離ランニングフォーム解析 (2) MR選手

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)@ 9621 ANALYSIS


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 ランニングフォーム解析プログラム( runa.exe )

 ランニングフォーム解析プログラム( runa.exe )は、少しずつ機能が整ってきました。次の(1)〜(6)のような内容です。

 (1) ランニングフォームのビデオ画像の1コマを取り込み、身体各部の座標をマウスで読み込む。
 (2) 読み込んだ座標に基づいてステックピクチャー画像を描く。
 (3) 身体の線的な要素(大腿部など)の姿勢角を求める。
 (4) あらかじめ設定しておいた、プログラム内のシミューションロボットに、その姿勢角を渡して、このロボットにフォームを真似させる。
 (5) ビデオ撮影の角度に由来する、画像の補正を、座標変換などによって行い、真横からのフォームへと変換する。
 (6) あらかじめ設定しておいた、身体各部の質量分布に基づき、身体各部の質量中心(重心)の位置を求める。

 この重心については、頭部、胴体、右腕、左腕、右脚、左脚について求め、これらをさらにまとめて、最後に、全身の重心を求めます。次の図では、全身の重心(へそに近い高さの黒丸)、右脚の重心(赤丸)、左脚の重心(青丸)について描いてあります。ランニングフォームにおいては、身体重心に対しての、上半身についての、相対的な重心位置は、ほとんど変化しないので割愛しました。

 MR選手のフロート

 MR選手のフロートにおけるランニングフォームを示します。
 MR選手は、とくに有名というわけではありませんが、私が少し指導した選手のなかでは、高速ランニングフォームに、かなり近づいた一人です。
 このフォームは2001年のもので、当時MR選手は大学生でした。たしか、1年生のときの記録会で、200mのタイムは25秒台でした。力が無駄に入って、エネルギーも最後までもたなかったと思います。2年生のころだったか、もっと力の使い方をうまくやって走れるためのトレーニング法を提案し、いっしょにこなそうとしました。やがて、途中で私はアキレス腱が痛み出し、最後までやれませんでしたが、MR選手は最後までこなして、ランニングにおける「リラクセイション」の意味が分かったようです。やがてMR選手は、11秒8だった100mのタイムを11秒4まで縮めましたし、25秒台だった200mでは、22秒台のタイムを出し、対校戦などで得点を獲得できるようになりました。
 当時の私は、ランニングフォームの画像をまとめていただけでしたが、2012年の現在、MR選手の連続写真を見ると、高速ランニングフォームの特徴をいくつかもっているものでした。
 次に示すMR選手のランニングフォームは、完全な高速ランニングフォームというわけではありませんが、そこへと目指すべき中間的なものとなっています。






図1 MR選手のフロートにおけるランニングフォーム


図2 (a)右脚キックと(b)左脚キックの重心変化

 図2として、(a)右脚キックと(b)左脚キックの重心変化をまとめました。赤い線で右を、青い線で左を表わしています。へそのあたりにあるのが全身の重心です。これらのステックピクチャー図の時間差は1秒の1/30です。これは、撮影したビデオの1コマの時間です。
 全身の重心の変化を見ると、5←4のところで大きく移動しています。このときのスウィング脚の動きを、(b)の13←12と見比べてみると、スウィング脚の重心の変化においても、5←4のところで大きくなっています。
 (a)と(b)で何が違うのでしょうか。(a)4 のところでのスウィング脚の膝の角度と、(b)12 のところでのスウィング脚の膝の角度を見比べると、(a)4 のほうが大きくなっています。
 このような、(a)4 の形のほうが、スウィング脚重心の、水平方向の動きを大きくしやすいのです。
 (b)12 のように、スウィング脚の膝を折りたたんでしまうと、スウィング脚重心の、水平方向の動きを大きくしにくくなってしまうわけです。
 このような観察と考察から、スウィング脚の動きを、全体のスピードに生かすためには、スウィング脚の膝を、完全に折りたたもうとしてはいけないということが分かります。これは、とても重要なコツです。


 

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