短距離ランニングフォーム解析 (7) 解析ソフトruna.exe

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito)@ 9621 ANALYSIS

PDF 短距離ランニングフォーム解析 (7) 解析ソフトruna.exe
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 解析ソフトruna.exeの機能

  ランニングフォームを解析するソフト( runa.exe )を開発しました。これの機能は次のようなものです。

 (1) ランニングフォームのビデオ画像の1コマを取り込み、身体各部の座標をマウスで読み込みます。このとき、身長をMの76と入力していますが、色々なタイプの選手について調べるため、図2のような身長と体型を指定するページを作ってあります。


図1 座標の読みとり(ステックピクチャーを描いて確認)


図2 身長と体型を指定するページ

 (2) 読み込んだ座標に基づいてステックピクチャーを描きます。


図2 ステックピクチャー

 (3) 身体の線的な要素(大腿部など)の姿勢角を求め、あらかじめ設定しておいた、プログラム内のシミューションロボットに姿勢角を渡してフォームを真似させます(図4の左)。さらに、視点の補正を座標変換で行って、真横からのフォームへと変換します(図4の右)。


図4 真横へのフォームへと変換

 (4) 身体各部の重心の位置を求めます(図4に表示)。
 (5) 一枚の画像によるフォームについての解析データを、数値として外部ファイルとして保存します。そして、連続したフォームの解析データを読み出して、これを新たな配列データとしてまとめ、外部ファイルとして保存します。


図5 7コマのビデオ画像による1歩の7フォーム

  (6) 連続したフォームの中で、地面に接地しているものを選び(図6)、スパイク面を地面に固定した状態で描写します(図7)。


図6 地面に接地している4フォーム


図7 スパイク面を固定して描いた4フォーム

 (7) 連続した、地面に接地しているフォームについて、これらの間を細分化したフォームを、シミュレーションロボットによって構成します。このとき、座標を内分してゆくのではなく、姿勢角を内分してゆくことによって再構成します。このとき、これらの詳細な角度変化についての移動平均(ランニング・アベレージ)をとります。そして、それらについての重心を求め、これについての移動平均をとります。再構成した詳細フォームについての、全重心の、水平方向と鉛直方向の、微小時間の変化量を、それぞれ数値で求め、グラフ化します。


図8 全重心変化グラフ(左)と有効詳細フォーム(中、右)

 図8(左)の全重心変化グラフでは、図7の4フォームについて、2コマ間を10分割した詳細フォーム(d0からd30までの総数31個)について調べてあります。黒いプロットが全重心(全身の重心)の水平速度dxです。緑のプロットは、この全重心の鉛直速度dyです。
 これらのプロットパターンを見て、地面にしっかりとついて力のやりとりを行っていない部分に縦線を入れています。中央に残っている部分を「有効キック区間」と呼びます。
 図8(中)は、この有効キック区間の詳細フォームを1つずつ間引いて重心を描写したものです。図8(左)は、この有効キック区間の、最初と最後の2フォームです。

 (8) 全重心のデータを参考にして、連続フォームについての詳細フォームの中から、キックポイントに対応するフォームを選びだします。図8のように、黒いプロットのピークがはっきりと現れているときは、そのピーク位置をキックポイントとします。ときどき、この黒いプロットが平たんになっていることがあります。このケースでは、有効キック区間の中央(mid)をキックポイントとします。
 キックポイントのフォームにおいて、キック脚の脛と太ももの姿勢角(水平面から測った立位角)を求め、以前の研究で調べた図10のデータと照らし合わせて、このキックポイントのフォームを分類します。
 これらの操作の結果は、runa.exe では、図11のような表示となります。


図9 キックポイントのフォーム


図10 キックポイント(パワーポジション)によるフォーム分類


図11 runa.exe でのフォーム分類グラフとキックポイントのフォーム

(9)有効キック区間の詳細フォームについて、身体各部の主な重心の水平速度に着目して、次のような解析を行い、その結果を「総合水平速度グラフ」として表わします。


図12 総合水平速度グラフ



 身体各部の主な重心とは、「全重心(G)」「スウィング脚重心」「キック脚重心」「上半身重心」「キック棒重心(上半身とキック脚)」などです。スウィング脚とキック脚は、ソフトのアルゴリズム上では判別していません。右脚や左脚の重心について人が識別します。言葉の使い方が正確ではないようですが、ここでは「上半身」を「トルソ(T)」としています。美術で使うトルソに両腕を加えたものです。「キック棒」とは、「上半身とキック脚」をまとめて、棒のように見たてたものです。全身からスウィング脚を取り除いたものと見ることもできます。
 「SG比」と「GK比」と「BK比」と「GB比」は、次の手順で定めています。
 @ スウィング脚重心(S)の水平速度 → dS
 A キック脚重心(K)の水平速度   → dK
 B 全重心(G)の水平速度      → dG
 C キック棒重心(B)の水平速度   → dB
 1) SG比 ← dS/dG
 2) GK比 ← dG/dK
 3) BK比 ← dB/dK
 4) GB比 ← dG/dB
 SG比の意味は、「スウィング脚重心が全重心を引っばる効果」ということです。GK比の意味は、「キック脚重心が全重心を押す効果」ということです。BK比の意味は、「キック脚重心が(キック脚も含めた)キック棒の重心を押す効果」ということです。GB比はSG比の効果を見るためのものです。

 (10)総合水平速度グラフの有効キック区間というものを、図12のようにしましたが、よく考えてみると、一度大きくなった水平速度が、このあと低下してゆく要素は、このようなフォームの段階では考えられません。図12で全重心の水平速度がピークを迎えたあとは、離陸が始まっていると考えられます。ですから、このときのキックフォームにおける「ほんとうの有効キック区間」は、次の図13となります。


図13 「ほんとうの有効キック区間」の全重心グラフと有効詳細フォーム

 図13(右)に示した、わずかな動きのところだけが有効詳細フォームとなります。詳細フォームとして5つくらいですから、時間としては、1/60秒となります。1秒間に30コマのビデオ画像での、2コマ間の半分です。しかし、スウィング脚の姿勢をなぞって、これくらいからこれらいまでとみなせば、ランナーとしては、じゅうぶん意識できる動きです。
 「従来のフォーム」とも呼ばれることがある、「ピストンキック」や「デルタクランクキック」のフォームでは、「有効キック区間」は、詳細フォームの10から20くらいになります。


図14 「ほんとうの有効キック区間」での総合水平速度グラフ

 図14は「ほんとうの有効キック区間」での総合水平速度グラフです。
 赤いプロットの右脚(キック脚)の水平速度dKと、オレンジ色の右キック棒の水平速度dBの関係が、BK比によって示されます。数学の関数(写像)の形式で表わすと、次のようになります。
    dK → f(BK) → dB
 次に、左脚(スウィング脚)の水平速度dSが、このキック棒dBと組み合わさって、全重心(G)の水平速度dGとなります。このときの効果はSG比によって対応づけることもできますが、GB比として直接的に示されます。
    dB → f(GB) → dG
 これ以外にGK比を設けています。
 これらの比や水平速度を見比べることにより、いろいろなランニングフォームの特性を調べることができます。
 (Written by KULOTSUKI Kinohito, Nov 21, 2012)

 

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