ej05 ブライアンオールドフィールドの回転式砲丸投
Rotational Sot Put by Brian Oldfield

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito) 本名 田中 毅(TANAKA Takeshi)

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 はじめに

 今回取り上げる ブライアンオールドフィールドの回転式砲丸投 の連続写真は、東京の区立図書館で見つけた陸上競技の本にあったものです。英文でした。その 11 SHOT という章は、ドイツ連邦共和国 のPeter Tschiene という人がまとめています。ドイツ連邦共和国の投擲コーチのようです。
 この11章 砲丸投 では、世界で主流となっている3つのフォームについて分析しています。(1) オブライエン投法、(2) トルク投法、(3) 回転投法 の3つです。
 私が中学生を指導していたとき、オブライエン投法は一人も教えたことがありません。一人、胴体の発達がじゅうぶんだった女子選手に、トルク投法を教えただけです。他の選手は、まだ中学生なので、胴体の筋肉群がなかなか発達せず、超古典的な 横向きのクライド投法 あるいは ホップグライド投法 と呼べるものをベースとしていました。ただし、それはサークルの前半だけの動きで、後半の動きは 回転投の要素を取り入れたものでした。
 私自身、大学生になってからも、走り高跳びに夢中で、身長176cm 体重68kg という細身の体だったのですが、大学の陸上競技部に投擲選手がいなくなり、先輩の命令で砲丸投の試技をすることになったところ、私が一番となってしまいました。9m77でした。このとき私は、対抗戦のライバルチームの砲丸投選手が取り組んでいたトルク投法を見て、その合理的な動きのことを知っていました。
 私自身が十種競技で行っていたのは、超古典的な横グライド投法(プラス)回転投げのトルク投法というものです。
 ところが、回転式投法の本質的な要素は 回転にあるのではない ということに気づき、この要素を組み込んだフォームを思いついて やってみたのは、十種競技の試合にも出なくなった、40歳台の中ごろのことでした。東京で地質調査の会社に勤めていたとき、夏休みをとって、出身大学の陸上競技部の夏合宿へ参加したのです。
 十種競技での砲丸投のベスト記録は10m00だったのですが、そのとき私は、練習とはいえ、11m40くらいを投げ、まだまだいけるとさえ感じていたのです。
 この投法には、まだ名前はありません。まだ一人も教えたこともありません。
 このフォームへといたるヒントをもらったのが、これから示す ブライアンオールドフィールドの回転式砲丸投の連続写真 です。

 ブライアンオールドフィールドの回転式砲丸投

 東京の区立図書館にあった陸上競技の本の、11 SHOT という章にあつた、ブライアンオールドフィールドの回転式砲丸投についての連続写真を、次の図1と図2に分けて示します。

図1 ブライアンオールドフィールドの回転式砲丸投(1-18)
(画像をクリック → 拡大画像のページ)

図2 ブライアンオールドフィールドの回転式砲丸投(19-36)
(画像をクリック → 拡大画像のページ)

 回転投げの要素は 回転ではない

 不思議なタイトルかもしれません。
 しかし、これが真実なのです。
 図1と図2の連続写真から、重要なポイントとなるところを取り出します。
 図3 ブライアンオールドフィールド(11-12) はターンの始まりのところです。
 ここでオールドフィールドは、円盤投のシルベスターのように、右脚のひざをのばして振り込み、角運動量をため込もうとしています。

図3 ブライアンオールドフィールド(11-12)

 次の図4 ブライアンオールドフィールド(25) は、投げ出しが始まるところです。
 ここでは、円盤投のダネクのように、右脚のひざの角度が90度に近い状態となっています。足首のかかとは、ダネクほどではありませんが、両足ともに浮いていて、力が入っていることが分かります。
 ここで最も重要なポイントは、これらの両足のつま先の方向が、オブライエン投法やトルク投法とは違っているということです。
 オブライエン投法やトルク投法では、前側の脚はただのブロックの働きしかしていません。これらの投法で体を起こすのに使われるのは、後方の脚だけなのです。

図4 ブライアンオールドフィールド(25)

 回転投では、このあと、両脚を使って伸びあがります。両足のつま先の方向が、体の正面に向いて、両脚でジャンプしようとしているところが図5のブライアンオールドフィールド(27-29)です。

図5 ブライアンオールドフィールド(27-29)

 一般に、砲丸が最も長く飛ぶ離陸角は、立った肩の位置から地面に投げるので、45度ではなく、もうすこし小さな角度となります。たとえば40度としておきましょう。
 しかし、この40度の角度で砲丸を投げ出すために、オブライエン投法やトルク投法では、後ろ脚のキックに加え、腕の力もかなり使って、まあ、全身を同時に使って、構えのポジションから40度の傾きのカタパルトを作って、その軌跡を運ぼうとします。
 ところが、回転式の場合は、考え方そのものが違うのです。
 40度の離陸角に必要な鉛直速度の成分を、図5のステージで、両脚のパワーを使って生み出しておくのです。
 このとき、40度ではなく、45度でも50度でもかまいませんが、それ以上の角度分の鉛直速度を生み出しておきます。

図6 ブライアンオールドフィールド(30-32)

 最後に行うのが、腕によって水平速度を組み合わせるということです。
 腕を使って斜めに加速するのではなく、鉛直方向への速度を持っている砲丸を、その瞬間、宇宙空間での無重力の状態であるかのように、水平な方向へ動かそうとします。
 実際には、砲丸は地球の重力の影響で、鉛直速度を減らしてゆきますが、それを補おうとはしません。あくまで、腕が受け持つのは水平成分です。
 こうして、砲丸が体から離れる瞬間に、ちょうどよい鉛直成分と水平速度となって、砲丸が飛んでゆくのです。
 私はこの感覚を、回転しない、横グライドのフォームで体験しました。
 回転しない回転投法 というフォームです。
 (Written by KLOTSUKI Kinohito, June 5, 2019)

 

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