ej06 堤雄司 幸長慎一 湯上剛輝 の円盤投

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito) 本名 田中 毅(TANAKA Takeshi)

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 はじめに

 2019年 第103回日本陸上競技選手権大会 男子 円盤投 決勝 における、上位3名の円盤投のフォームについて解説します。
 データは次のYouTube画像から、速度0.25にして、任意のコマを採取しました。YouTube画像でコマ送りができると、連続写真のようなものが構成できるのですが、残念ながら、できません。

 堤 雄司 2回目 61m64
 幸長 慎一 4回目 56m67
 湯上 剛輝 5回目 56m52

 堤 雄司 2回目 61m64

 図1は「堤 雄司 2回目 61m64」のYouTubeから構成した連続写真です。ただし、時間間隔は均等ではなく、任意にサンプリングしたものです。画像をクリックすると拡大画像のページへ進みます。

図1 堤 雄司 2回目 61m64 (時間間隔は均等ではない)
(画像をクリック → 拡大画像へ)

 堤選手の右脚の振り込み@は、シルベスターのように、膝をのばして大きく振り込むタイプです。
 ところがAとBを見ると、Aの時点で膝をのばすのをやめ、やや折り曲げて、左脚によるキックによる、1歩だけのダッシュを行おうとしています。
 しかし、Bを見ると、その左脚の膝はすでに伸びていて、ダッシュの効果は生み出せていません。
 どうやらAとBの動きは、回転を速くしようというものようです。
 このことは、Dにおける右足のポジションが浅いことで分かります。
 中間での構えのフォームEでは、右脚の膝の角度が浅く、腰があまり沈められていません。シルベスターのフォームによく似ています。
 F→G→Hの動きも、まったく、シルベスター・タイプです。少し両脚でジャンプし、円盤の鉛直速度を大きくしています。
 Hで右肩の高さに腕が振りぬかれています。
 最後の回転軸は、左足→腰→首となっていますが、あまり右に傾いていません。このため、リリース時の円盤の回転モーメントの半径を、大きくできていません。
 これらのことから、シルベスターの(失敗に近い)オリンピックでのフォームと同じ欠点をもっていることが分かります。
 (1) 中間ポジションへの1歩ダッシュ
 (2) 中間ポジションで腰を沈めておく
 (3) リリース時に円盤の回転半径を大きくする
 これらの技術的な問題点が中途半端なままです。

 幸長 慎一 4回目 56m67

 図2は「幸長 慎一 4回目 56m67」のフォームです。

図2 幸長 慎一 4回目 56m67 (時間間隔は均等ではない)
(画像をクリック → 拡大画像へ)

 幸長選手は、次の3つの技術ポイントを見事に行っています。
 (1) 中間ポジションへの1歩ダッシュ(@→A→B)
 (2) 中間ポジションで腰を沈めておく(D)
 (3) リリース時に円盤の回転半径を大きくする(F)
 @→Aの動きで、1歩ダッシュが行われていることが分かります。その結果が3での中間ポジションで、こんなに深く、左のラインの位置まで飛んでいます。理想的です。
 Dのフォームで分かるように、腰がかなり低い状態で構えに入っています。
 D→E→Fの動きで、リリース時の円盤の回転半径を大きくしていることが分かります。
 ただ、このときの投擲では、リリースのFで、円盤を放すときの腕の角度が、肩に対して水平もしくは少し上の状態にもってゆけていません。ダネクのフォームが、この技術の見本であり、目標となります。
 このときの投擲は、ビデオを見て分かるように、円盤の軌跡が低いものでした。
 最後に、傾きながらも、両脚でジャンプするか、しっかりと腕を肩より高く持ち上げるという技術を組み込めば、ここの技術を改善すれば、もっともっと記録がのびるはずです。

 湯上 剛輝 5回目 56m52



図3 湯上 剛輝 5回目 56m52 (時間間隔は均等ではない)
(画像をクリック → 拡大画像へ)

 @で分かるように、右脚を大きく振り込んでいますが、Aでは左脚の膝が伸びていて、1歩ダッシュはほとんど効果がありません。
 Bでの中間ポジションが浅く、しかも、右のラインに近いところです。1歩ダッシュによって、回転の角運動量を高めるという技術が生かされていません。
 Cでの構えの腰も高いものです。右足のかかとがべたっと地面についていて、力が一度ここで抜けていて、ダネクのような、力を入れたままの構えができていません。
 D→Eで少しジャンプしているように見えるかもしれませんが、意図的なジャンプは行われていません。
 ただし、上半身の筋力が生かされ、Eで、円盤を振り切る腕が、肩の高さとなっています。ダネクはもっと高く上げているのですが、これに近づく中間段階のフォームです。
 左脚→腰→首の軸が立ちすぎていて、さらに、左腕が折りたたまれて胸にくっつけられておらず、リリース時の円盤の回転軸が最小のフォームとなっています。
 これでは記録が伸びないのは当たり前です。

 中間ポジション

 次の図4は「3人の中間ポジション」を比較したものです。

図4 3人の中間ポジション
(画像をクリック → 拡大画像へ)

 幸長選手の中間ポジションの姿勢がもっともすぐれています。
 腰が低い。サークル後方へ少し傾いており、横から見たときの体の軸を後方へと傾けている。これは、ここから投げ出すまでの、体を独楽と見たてたときの、独楽の面が水平から傾くこととなり、円盤の軌跡を理想的なものとするものです。
 堤選手は、独楽の面が水平に近くなります。この点を堤選手は、最後のジャンプでおぎなおうとしているわけです。

 リリースフォーム

 次の図5は「3人のリリースフォーム」を比較したものです。

図5 3人のリリースフォーム
(画像をクリック → 拡大画像へ)

 リリース時の右腕の、肩に対する角度を比較します。
 (堤) 水平より少し上の角度
 (幸長) 水平よりかなり下の角度
 (湯上) ほぼ水平の角度
 体全体でのジャンプを加えていることもあり、堤選手が大きな鉛直速度を円盤に与えていることが分かります。おそらく、理想的な迎角(水平から上向きの角度)で円盤が飛び出し、さいごに伸びて60mをかるく超えたようです。
 リリース時の円盤の回転半径を大きくしようとするため、体の軸を左側に作って、やや右に傾くという技術は、幸長選手がすぐれていますが、残念ながら、円盤を支持する右腕の角度が水平面より下になっているので、とことん大きくできていません。少なくとも水平の高さ、さらに幾何的に見て理想を言えば、少し上向きに角度を持つというのがよいのです。この動きは、イメージしてトレーニングしてゆけば、できてゆくはずです。
 (Written by KLOTSUKI Kinohito, June 28, 2019)

 

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