高速ランニングフォームについてのエピソード(18) キック軸加速度
キック脚の伸張反射を調べるためのキック軸加速度

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito @ 9621 ANALYSIS)

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 はじめに

 キック脚の筋肉群や腱が外力によって引きのばされたあと反射的に収縮し、大きな力を生み出します。これを伸張反射といいます。これは走高跳や走幅跳などの踏切で強く作用しています。一般のランニングにおいても、この現象は生じているようですが、どのように利用されているのかということは、明らかになっていなかったようです。そこで、この伸張反射がランニングフォームにおいて、どのように利用されているのか調べることにしました。

 キック軸とキック軸加速度

 ランニングフォームにおいて、キック足が地面に接地している局面を考えます。このとき、地面において力をやりとりする、キック足の支点(O)を決めておきます。ランナーの質量分布を想定して、全身の重心(G)を求めます。これらのOとGを結ぶ線分をキック軸(GO) と呼ぶことにします。


図1 キック軸(GO)

 このキック軸は、ランナーの足が地面に接しているキック局面において、長さを変化させることになります。図2で示したように、(A)から(B)にかけて短くなり、(B)から(C)へ、さらに(D)へと向かって長くなってゆきます。これらの間も、ランナーのフォームにおけるいろいろな姿勢角の変化の組み合わせによって求められる全重心(G)の位置によって、なめらかに変化してゆきます。この変化を、これらの(A)〜(D)のフォームからシミュレーションモデルによって補間して求めました。


図2 キック軸(GO)の長さの変化

 図3は「キック軸とキック軸速度とキック軸加速度」について説明するためのものです。図2の4つのフォームの間を10分割してシミューションモデルで補間したものを詳細フォームとします。
 図3の左にある3つのフォームは、そのような詳細フォームから、10番目(10 [d] )と22番目( 22 [d] )と、それらの中間位置のものを描いたものです。詳細フォームの10〜22のところを有効キック区間として、図3の右側にあるグラフでは、それ以外のところに縦線を入れてあります。
 このグラフで黒いプロットは全重心(G)の水平速度です。グラフの左縦軸のところにあるdx[m/s] として目盛が表示してあります。
 キック軸(GO)の長さの変化をキック軸速度(dGO)と呼び、グラフのプロットとしては、負値のとき濃い黄色で、正値のとき緑がかった水色で表示してあります。このときの目盛はdGO (0) を原点として、すこしずらせてあります。
 キック軸(GO)は接地後少し短くなって、その変化がゆるやかなものとなり、反発して、長くなってゆこうとします。グラフの下に dGO +1.27 とあるのは、赤い縦の点線位置(キックポイント、全重心水平速度が最大値をとるとき)での値です。


図3 キック軸とキック軸速度とキック軸加速度

 このキック軸速度(dGO)の時間変化を求めたものがキック軸加速度(aGO) です。グラフでは青い実線で描いてあります。この値を重力加速度(g=9.80 [m/ss])で割った値(aGO/g)として描きました。グラフの下にあるaGO/gにおいて、KP=5.2というのは、キックポイントでの値です。また、Max=6.4は最大値です。いずれも、体重の何倍かという比の値となっています。
 図3のグラフでは、全重心(G)の水平速度のピーク位置が詳細フォームの17 [d] のところにあり、キック軸加速度(aGO, aGO/g)のピーク位置は詳細フォームの13 [d] にあります。加速度が生じているということは力が作用しているということです。そして、力が作用して速度が変わります。そのようにして変化した速度がピークを迎えるのは、このように、力が作用した、すこし後のこととなります。
 このようにして規定したキック軸加速度を調べると、キック脚の筋肉群などの伸張反射がうまく利用されているのかどうかが明らかになります。説明のために取りあげた今回のフォームでは、うまく利用されているものでした。うまく利用されていない他のフォームについての解析などについては、ページタイトルを改めて説明したいと思います。
 (Written by KULOTSUKI Kinohito, Dec 22, 2012)

 

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