高速ランニングフォームについてのエピソード(2)フォームの分類

黒月樹人(Kinohito KULOTSUKI)@黒月解析研究所

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 人が走るときのランニングフォームというものにはいろいろなものがあります。「高速ランニングフォーム」と私が名づけて調べているものは、1991年ごろ研究者によって「膝をロックしたキック」とされていたものについて、これでは長すぎてとりあつかいにくいと考え、それまでのフォームが「ピストンキック」と呼ばれることもあったので、これと異なるという意味もこめて、「クランクキック」としたものに由来します。いろいろと調べてゆくと、キック脚の膝は、ロックされるような動きをしているのではなく、小さな動きで変化していることも分かりました。このことから、「膝をロックしたキック」という呼び名はあっていないようです。この流れで表現するとしたら、「膝の角度変化が小さなキック」となるでしょうか。


図1 高速ランニングフォーム(膝の角度変化が小さなキック)



 膝の角度が180度へと伸ばしきってしまうものをピストンキックとし、それ以外をクランクキックとすると、あまりに多くのフォームがクランクキックへと分類されることになってしまいます。一見すると、最後に膝の角度を180度へと伸ばしきってしまうランナーについても、このときのフォームをくわしく調べると、全体の重心が離陸するまでの、有効なキック区間が終わったとき、キック脚の膝の角度は、多くの選手において、180度より小さかったのです。


図2 ピストンキック



 そこで私は、世界の一流選手のフォームや、日本のトップクラスの選手、普通の大学生や高校生、それと、私のフォームなどを調べて、キック局面において身体重心が最大速度となる瞬間を、キック脚の、脛の姿勢角(後方への水平線からの立位角)と太ももの姿勢角(同)によってプロットし、それらのプロットグループのパターンから、アルファクランクキック、ベータクランクキック、ガンマクランクキック、デルタクランクキックと続き、その隣がピストンキックとなるようにしました。また、ベータクランクキックより、さらに沈み込むフォームが、走幅跳の踏切1歩前に現れることに気づき、このようなものをイプシロンクランキックとして区別することにしました。


図3 キック脚の脛と太ももの姿勢角によるフォーム分類



 このような分類において「高速ランニングフォーム」と呼んだものは、何に対応するのかというと、これまでの研究では、ベータクランクキックだと思っていました。モーリス・グリーン選手のフォームではアルファクランクキックも見られますが、これは、あまり主要なものではなく、スピードを維持するだけのキックのときに出現するものと考えられます。
 これまで「高速ランニングフォーム」はベータクランクキックだと認識してきたのでしたが、ここ最近組み上げたC言語によるランニングフォーム解析ソフトruna.exeにより、これまでより精密な解析が行えることになったため、キックポイントのフォームについて、これまでの判断と、びみょうにずれるようになりました。このようになると、これからはruna.exeによる解析結果が基本となります。かくして、「高速ランニングフォーム」の具体的な分類は、おもにベータクランクキックとガンマクランクキックということになりました。


図4 ルメートレ選手のキックポイントフォーム(腰高ベータクランクキック)




図5 ガトリン選手のキックポイントフォーム(中腰ガンマクランクキック)



 ここで説明した「高速ランニングフォーム」の定義は、キック脚の、脛や太ももの姿勢角によっています。スウィング脚のことについては何もふれていません。スウィング脚のふるまいについて名づけるとすれば、「後方巻きあげ型」(ロールアップ)と「直線引き出し型」の2極を考えることができます。そして、それらの中間にあるのが「直下引き付け型」です。はじめ私は、モーリス・グリーン選手やジャスティン・ガトリン選手、そして、アサファ・パウエル選手らのスウィング脚を観察し、それを真似ることにより、「直線引き出し型」となるものだと考えていました。しかし、スウィング脚が「直下引き付け型」で、キック脚のほうではベータクランクキックやガンマクランクキックとなっている選手もたくさんいます。ボルト選手やゲイ選手はこちらですし、ガトリン選手も、片脚は「直線引き出し型」で、もう片脚が「直下引き付け型」となっていました。スウィング脚については、それほど効果の違いが生じるわけではないことも分かってきましたので、このスウィング脚についてこまかく議論するのはさけようと思います。
 (Written by KULOTSUKI Kinohito, Nov 20, 2012)

 

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