高速ランニングフォームについてのエピソード(20) 重心の高さ
(全)重心の高さの変化とキック力の水平変換効率の関係

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito @ 9621 ANALYSIS)

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 はじめに

 「エピソード (18) キック軸加速度」では、キック軸 (GO) に沿って作用する力について調べました。「エピソード(19) 加速のための力」では、全重心 (G) などの水平速度の変化から、水平方向に作用する力について調べました。
 これらの力の関係を、いろいろなランニングフォームについて調べると、キック軸 (GO) に沿って大きな力が作用しているにもかかわらず、水平方向の速度を加速するような力が、あまり生まれていないものや、その逆のものなどがありました。これは、これらの速度と力の関係において、まだよく分かっていないメカニズムがあるということを暗示しています。ここでは、そのようなメカニズムについて考察します。

 (全)重心の高さの変化とキック力の水平変換効率の関係

 2つの代表的なフォームについてのモデルを図1として示します。(a) は「(全)重心の高さを変えない」もので、(b) は「重心の高さを変える」ものです。


図1 (全)重心の高さの変化といろいろな速度の関係

 図1 (a) は「重心の高さを変えないフォーム」の、図1 (b) は「重心の高さを変えるフォーム」の、「(全)重心の高さの変化といろいろな速度の関係」を考えるための模式図です。薄い色で描いたステックピクチャーをベースとしているように、実際のランナーのフォームから構成しました。
 (a) では dr=BE, dx=BA となっています。(b) では dr=BE, dx=BC, dy=CA となっています。(a) では dy=0.0 となっているわけです。
 実際のランナーのフォームをベースとしましたので、げんみつには違うかもしれませんが、画像のサイズを調整して、(a) と (b) の AO の長さを同じにしました。OE も同じとなります。仮定として、BE も同じ長さだとします。これらにより、GO軸の変化としての dGO が等しいということになります。AO から BO の変化に要する時間を t とおいて、dGO = (BO-AO)/t = BE/t となります。これらの時間は全て t なので、dx などの速度を、それに対応する長さで比較することができます。以後、t で割る処理は略します。
 dGO は BE に対応しています。これが、GO軸に沿った変化を示す長さです。このとき、全重心 G の水平速度 dx の長さを比較します。区別するため、(a)のdxをdx(a)とし、(b)のdxをdx(b)とします。他の速度などについても、このような表現で区別します。
 キック軸 GO の向きの速度 dr と、全重心 G の水平速度 dx の比 dx/dr をキック速度変換比と呼ぶことにします。
 (a)のキック速度変換比dx(a)/dr(a)に対して、(b)のキック速度変換比dx(b)/dr(b)がどのようになるのかということを求めようかと考えましたが、複雑な計算になりそうなので、やめておきます(追記)。
 図1の (a) と (b) で、BO, BE, AO を同じ長さとしましたから、このような作図によって明らかなように、(b) では、dy 成分が 0 ではないということにより、dx(a) に比べて dx(b) が小さくなっています。GO軸の変化 BE の長さは同じですから、(a) のキック速度変換比 dx(a)/dr(a) と、(b) のキック速度変換比 dx(b)/dr(b) の、それぞれの分母は同じ値です。すると、これらの変換比の違いは、分子の dx(a) と dx(b) の違いそのものとなるわけです。
 むつかしく表現することになってしまいましたが、けっきょく、図1の(a)と(b)で描かれたdxの長さの違いが、キック速度変換比の違いだということです。ちなみに、この作図による値をピクセルとして読みとって求めたところ、dx(b)/dx(a)=0.75 になりました。作図から求めた (a) のフォームのキック速度変換比は 3.7 なので、(b) のフォームのキック速度変換比は 2.8 となります。

 まとめ

 キック軸 GO の出力が同じでも、このときの全重心 G の動きが水平に近いものでないと、この出力を水平速度へと変換する率が低下します。
 (Written by KLOTSUKI Kinohito, Dec 24, 2012)

 追記

 図1の2つの三角形、(a) △BOA と (b) △BOC の周囲の長さは等しいもののようです。(a) での dx(a) の間の、たとえば、B から 4 対 1 に内分する点をつまんで、Aの真上まで引っ張っていったものが、(b) の C 点だということになります。このようなわけで、dy(b) の値として使った長さだけ dx(b) は dx(a) より短くなるわけです。
 (Written by KLOTSUKI Kinohito, Dec 25, 2012)

 

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