高速ランニングフォームについてのエピソード(25) ゴリラジャンプ
ハムストリングスを強化するための補助運動

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito @ 9621 ANALYSIS)

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 はじめに

 400mなどの比較的長いスプリントランニングで優れているランナーが、他のどこの筋肉より、太ももの裏側の筋肉群(ハムストリングス)がよく発達しているということが知られ、短距離ランナーにとって、ハムストリングスを鍛えることが重要だと考えられてきました。
 これとは別に、100mなどの比較的短いスプリントランニングでは、私が高速ランニングフォーム(もしくはサバンナキック)と名づけているフォームのランナーが好記録を生み出すようになりました。このようなフォームの場合、太ももの裏側の筋肉群(ハムストリングス)の役割は小さなものとなり、どちらかというと太ももの表側の筋肉と、大殿筋などが発達するようになります。
 すると、100mなどの比較的短いスプリントランニングにおいて高速ランニングフォーム(サバンナキック)系のフォームを使えるようになったランナーは、あまり必要としないハムストリングスを、自然と弱めてしまいます。
 通常のトレーニングにおいては、これで何も問題が生じないようにも思えますが、極度の緊張状態で行われる、試合でのクラウチングスタートからのダッシュランニングのとき、弱っているハムストリングスに過度の負荷がかかって、肉離れを起こしてしまうことがあります。このような現象の具体的な事例には事欠きません。100mでの優れたスプリンターほど、高速ランニングフォーム系に近づいており、速く走れば走るほど、自然とハムストリングスを弱めてしまっているのですが、そのことを忘れてしまい、危険だという認識もないまま、試合で肉離れを起こしてしまうというストーリーなのです。
 このような悪循環を断ち切るためには、ハムストリングスに頼らなくても速く走れるようになった高速ランニングフォーム系のランナーこそ、ハムストリングスの肉離れという「爆弾の火薬」を蓄えているのだということを認識し、このような「爆弾の火薬」を減らしておくべきなのです。

 ゴリラジャンプ

 ハムストリングスを強化する運動として代表的なものにレッグ・カールがあります。ウェイトを使ったマシンでおこなうだけでなく、自転車のゴムチューブなどを利用して行うこともできます。これらは比較的静的な運動ですから、筋肉量を増やしがちです。速筋ではないものを増やしてしまうかもしれません。ハムストリングスの肉離れからの回復としては、それでも、頑丈になりさえすればよいかもしれません。
 これに対して、これから紹介する運動は動的なものです。ハストリングスは外力に応じて引っ張られるので、速筋を発達させる可能性が大きくなります。


図1 ゴリラジャンプのための基本ポーズ

 図1は「ゴリラジャンプのための基本ポーズ」です。このときトレーニングの対象となるのは、赤い脚のほうのハムストリングスです。このポーズでは、両手を一瞬地面につけることを条件としていますが、このとき、スタートのときのように指を広げておくと、爪をはがしやすくなってしまうので、ナックルのポーズ、すなわちグーの形でやることにしました。ゴリラは、4つの脚で歩くとき、腕のほうをグーとしています。これをナックルウォークというそうです。これがゴリラジャンプの名前の由来です。爪をはがすおそれがないときは、パーの形でやってもかまいません。

 @ [上下]  このポーズを基本として、上下にピョンピョン弾みます。これをおもいきり高く跳ぶ運動は「ボルゾフ・ジャンプ」と呼ぶそうです。
 A [前または後]  この姿勢のまま水平方向へジャンプします。前方へ進むのと、後方へ進むパターンがあります。後方へ進む運動は、砲丸投のオブライエン投法における「後方グライド」の運動を連続して行うものとなります。
 B [坂をバックで]  跳び箱のような安定した台があるとき、この姿勢を保ったまま、そこへ跳び乗って、後ろへ降りるという、反復ジャンプを行います。これが一番きついものでしたが、@で紹介した「ボルゾフ・ジャンプ」のほうが、より安全で、慣れてくれば、強度も高められると思います。台を使うやりかたは、うまく乗れないときに怪我をする可能性があります。登り坂などを利用すれば、このような事故をさけることができるかもしれません。つまり、Aの登り坂バージョンです。おそらく、登り坂の上へとむかって後方に進めば、安全かつ強度の高い運動となるでしょう。

   これらの運動の回数や距離、あるいは、それらのセット数は、それぞれ試してみて決めて下さい。台を使うもの以外は、オールアウト状態まで追い込むことができます。もう無理というときでも、怪我をする可能性が無いという運動をやることも、トレーニングにおいては大切なことです。
 (Written by KULOTSUKI Kinohito, Jan 21, 2013)

 

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