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黒月樹人のタバスコキメラミーム16「宇宙の計量③」
Tabasco Chimera Meam 16 of K.K. as “Universal metric

黒月樹人 (KINOHITO KULOTSUKI, treeman9621.com

 (これは「宇宙の計量②」の続きなので「7. ロバートソン-ウォーカー計量の導出②」までは、タバスコキメラミーム14と同15を参照してほしい。)

8. 宇宙の計量としてのロバートソン-ウォーカー計量

 フリースバッハのテキストに従ってロバートソン-ウォーカー計量と呼んで、タバスコキメラミーム15で、この計量の導出法をたどった。しかし、正確に述べると、この計量の考案者の名誉は、頭文字で並べられたFLRW計量の、RWではなく、FLのほうであろう。Fはフリードマン (Friedman) で、Lはラメトル (Lemaître) と読める名 (辞書にはルメートルとも書かれているが、発音記号からは、ラメトルかルメトルのほうが近いだろう) の頭文字である。フリードマンは1922年と1924年に、ラメトルは1927年に、この解についての記録を残したらしい。フリードマンは1925年に亡くなっており、数学的な解を求めただけで、宇宙論への解釈については、あまり触れていないのかもしれない。それに対して、ラメトルは、この解をハッブルの法則と関連づけてビッグバン理論へと発展させたようだ。ロバートソン (アメリカ人) とウォーカー (イギリス人) の成果は1935年あたりのようだ。あきらかに遅いが、こちらのほうが先に有名になったのだろう。何しろ英語文化圏の研究者のほうが、広報力では優れている。フリードマンはロシア人だし、ラメトルはベルギー人である。FL計量と呼ぶとすれば、フリードマン-ラメトル計量ということになる。この計量の名前が4名連記で、フリードマン-ラメトル-ロバートソン-ウォーカー計量と呼ぶのは、いかにも冗長である。頭文字でFLRW計量と呼ぶのも味気ない。日本語での造語法なら、フラロウ計量とでも呼ぶところだろうか。

 FLRW計量の数学的な形は、次のようなものである。

ds2c2dt2R(t) [ dr2(1k r2)r2(dθ2sin2θdφ2) ] 

(8.1)

 これが表現するモデルの適用範囲は非常に広くて、星の内部から、宇宙全体にまでわたっている。このモデルは、次のような、まったく異なった対象に応用できるとされている。

   モデル① 宇宙――持つ> 粒子(銀河)

   モデル② 銀河――持つ> 粒子()

   モデル③ 星――持つ> 粒子

   モデル④ 星(重力圧力――限りなく増える>)

 フリースバッハのテキストでは、この計量の導出を47節「重力崩壊,超新星」のところで軽く論じてから、この計量の中に現れるR(t)に関する法則や公式について、引き続いて説明している。そのページの下部欄外に、「Ⅸ章とⅩ章では、記号Rはスカラー曲率ではなく、つねに計量のスケール因子を表わす」と記されている。R(t)の名前は「計量のスケール因子」だったのだ。このような情報は重要なので、もっと大きく表示しておいてほしいものだ。幾つか公式のようなものが導かれて、ようやく、「R=…」というスタイルの式が現れる。

R=(R(0)/2)(1+cosψ)

(8.2)

 この数式が描くグラフはサイクロイドと呼ばれている。自転車のタイヤの一点に発光体をつけて、長時間露光で撮影したとき、転がるタイヤに運ばれて発光体が描く曲線である。図としてテキストに描かれている曲線では、最高点の位置からタイヤが進行して、地面に落ちるところまでが実線で、次のサイクルからは点線になっている。今考えている宇宙のモデルでは、星が崩壊したら、そこで終わるだろうから、地面に落ちるところが、その崩壊の終了点に相当するわけである。これが、宇宙全体を表わしているとすれば、どうだろうか。サイクロイドの曲線が、何度もぽんぽんと弾んで進むように、崩壊したり爆発したりを繰り返すだろうか。もちろん、このようなことは決して検証できないことだろう。

 フリースバッハのテキストの、続くⅩ章は「宇宙論」というタイトルになっていて、この章のインスピレーションの源は、このFLRW計量の式である。ただし、このテキストでは、ロバートソン-ウォーカー計量と呼ばれている。そこでは、「宇宙の領域がおよそ1.3×1010光年の半径であり、その中におよそ1011の銀河(星系)がある」という表現から始まって、「宇宙ではすべての場所と方向は同等である」という宇宙原理の仮説へと進んで行き、このような、「宇宙原理の一様性と等方性の要請を満たす計量」がロバートソン-ウォーカー計量であると、述べられ、再び、(8.1)式が箱に入れられて提示されている。

このような状況の中で、この計量の中に組み込まれている、意味のよく分からない記号であるkについての考察が展開される。式の形成過程から、このkは実数でよいはずであるが、比較ためであろうか、kについて、0+1と-1の値を「制限」して論じ、半径R(t)の球面における計量を式で規定して、その中で、kの意味を、次のように分類している。

k=  0   [>]  平面の計量

k=1   [>]  球面の計量

k=1   [>]  擬球面の計量

 

 ここでの、最後の行にある「擬球面」という言葉は、かなり抽象的なもので、「球面とは違って擬球面を3次元空間に埋め込むことはできない。しかし、局所的に擬球面は双曲面で近似される」と書かれている。

 このあと、テキストでは、「光速を超える速度」という単元がある。このようなロバートソンウォーカー計量で考察する宇宙論では、「光速を超える速度」を制限する理由がないのであるが、特殊相対性理論では、これを制限している。このようなことが矛盾とならないための理由を、この単元で三つばかり説明している。これについて論じるのは、やがて、無意味なこととなるだろう。ここで論じるのは略す。

 それから、「宇宙モデル」や「宇宙の状態」という章がまとめられ、この計量と、それを生み出す元となったアインシュタインの場の方程式を使って、フリードマンモデルのことや、アインシュタイン-ドジッター宇宙のことや、ダーク・マターダーク・エネルギーのことが語られてゆく。

 9. 新しい理論への道

 リサ・ランドールの「ワープする宇宙」という本を読んでいると、彼女と共同研究者がアイディアを出しあって、そのアイディアを具体的な方程式として計算してゆき、その解が見つかるかどうか調べてゆくという描写が、あちこちに見られる。それが、実際にはどのようなことかということが、ようやく想像できるようになった。おそらく、その具体的な手続きは、こうである。

たとえば、アインシュタインの場の方程式に対応する、計量のモデルを考える。式の中に、思いついたアイディアを表現する変数なり、未定係数などを、どのように組み込めばよいのかを考える。

それらの組み込みが妥当なものであると考えられたら、必要となるクリストッフェル記号でのゼロではない成分の計算など、基礎的な数式と数値をそろえてゆく。理論式に見込まれている、リッチ・テンソルなどを計算して、仮定や条件の幾つかを利用して、変数や未定係数の具体的な表現を求めてゆく。

そして、仮定したアイディアを表現する、具体的な式を導く。ここのところが難点のはずで、そのように整合した解が得られるかどうかは、いつも保障されているわけではない。仮に、このハードルがクリアーできたとしよう。

次になすべきことは、現れた式の解釈である。式を変形し、現実世界の現象と比較して、言葉で説明できて、理解できることへと結び付けてゆく。このとき、想像しがたいことには、「擬」とか「虚」とかの用語をつけて、空想の世界のことではなく、ただ想像しがたい世界の事象であるという位置づけをしておく。数式だけの結果は、理解しづらいものである。このような、言葉で言い表すことができる物語をファンタステックに構成できれば、新しく生み出した理論が、世の中にアピールする力も極大へと向かう。

最後に必要なのは、この理論に対するネーミングだ。これが、いかにも、「すべてのことを解き明かしました、もう他に残された可能性はありません」ということを、的確に言い表すものであれば、新しい理論が生き残る確率は格段に大きくなる。たとえば、「一般」とか「特殊」とか「絶対」とか「相対」などである。(2008.09.29)

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