黒月樹人のタバスコキメラミーム19「ガリレイテイルの謎」
Tabasco Chimera Meam 19 of K.K. as “The mystery of Galilei tail”
黒月樹人 (KINOHITO KULOTSUKI, treeman9621.com

アインシュタインの特殊相対性理論に疑問をもち、ここの論理の展開に、数学的な矛盾を見出して、そのことを問うことにしたのが始まりだった。特殊相対性理論の結果から導かれる矛盾は、既にいくつか知られていて、あれこれと議論されていた。しかし、この、論文の中にある、数学的に成立しないはずの論理が、どうして、これまで見逃されていたのか。これは大きな謎である。「相対性理論」という、古典的な解説書を書いたW. パウリも、この部分は無視している。

誰も気づいていなかったという可能性以外に考えられるのは、そのような論理が認められていたので、あらためて論じる必要がなかった、という可能性である。そのような可能性を広げるような証拠が見つかった。アインシュタインが用いた式と、まったく同じ式を、ポアンカレが使っていたのである。それは、「ポアンカレの局所時間」という考えが生まれるときのことである。ところが、このとき、ポアンカレは、この式を使うけれども、これらの式は現実のものではないと認識していた。ここで生まれた「ポアンカレの局所時間」というものは、現実的なものではなく、本当の時間を知ることができない、運動座標系にある観測者が、仮に採用する時間であるとポアンカレは認識していたのだ。ところが、これらの仮想の時間が、「ローレンツの局所時間」を経過して、アインシュタインの特殊相対性理論へと組み込まれるようになり、いつのまにか「仮想」という言葉が消えてしまったのである。

「ローレンツの局所時間」と「フィッツジェラルド-ローレンツの収縮」がいっしょになって「ローレンツ変換」が生まれ、アインシュタインの特殊相対性理論に組み込まれ、さらには「ミンコフスキー空間」が現れる。ここから、さらに「タキオン」が芽生える。これらの物語の源泉は、どうやらマイケルソン-モーリー実験にあるようだ。そして、その背景には光学的エーテルの問題がある。

ローレンツ変換

x’=γ(xvt),

y’y,  

z’z,  

t’= γ(tvx/c2),  

γ=(1v2/c2)1/2

 

 

 

(1)

 

 

光が進むときの媒体としての、光学的エーテルの問題は、光だけでなく、電磁波の問題へと結びついてくる。なぜなら、光は電磁波の一種であることが、後に明らかになるから。

そこに「ダランベルシアン()」が現れる。ここに一つの接点がある。ダランベルシアンは波動関数の方程式から定義される。電磁波の理論には波動関数があふれている。ダランベルシアンも欠かせない。

ダランベルシアン

=(1/c2)2/∂t22/∂x22/∂y22/∂z2

 

(2)

ローレンツ変換はダランベルシアンを媒介として生まれた。ところが、そのときの物語が、少し、あやしい。しかし、この、あやしさは、ローレンツ変換とダランベルシアンの場面には現れない。現れるのは、ガリレイ変換とダランベルシアンの関係においてである。

ガリレイ変換

x’xvt,   y’y,   z’z,   t’t

 

(3)

ローレンツ変換とガリレイ変換は、いずれも、並行移動における座標変換の一種である。ただし、ローレンツ変換では、もう少し複雑になって、並行移動するのだが、長さが縮むのだという。さらに、時間も変化する。しかし、ローレンツ変換では、ダランベルシアンは変わらない。これに対して、ガリレイ変換では、変換前のダランベルシアンが、変換後には、ダランベルシアンの形状だけでなく、尻尾のような、余分な項を生み出してしまう。

ダランベルシアンに対するガリレイテイル▲G

□=□G

G(v2/c2) (∂2/∂x’2)(2v/c2) (∂2/∂t’ ∂x’)

 

(4)

これをダランベルシアンに対するガリレイテイルと呼ぼう。ところが、ローレンツ変換では、ダランベルシアンに対するローレンツテイルのようなものが現れない。これは当然のことで、ローレンツ変換は、処理の過程で現れた、このローレンツテイルの項を、恒等的にゼロとするという要請を受け入れることによって成立しているのだ。

ダランベルシアンに対するローレンツテイル▲L

□=□L

L{(v2/c2)p2p2+1}(∂2/∂x’ 2)

2p{ pv /c2r }(∂2/∂x’∂t’)

{ p2/c21/c2r2}(∂2/∂t’2)

 

 

(5)

だから、ローレンツ変換というルールによって支配されているミンコフスキー空間では、ダランベルシアンは変わらないので、波動関数も安心して生きのびることができる。ここはマクスウェルの電磁方程式が自由に振る舞えるところである。これに対して、ガリレイ変換と結びついているユークリッド空間は、ニュートンの運動方程式にとって心地よいところだ。

こうして、ニュートンの運動方程式とマクスウェルの電磁方程式の、どちらを厳密なものと見て、どちらが近似されたものであるかということを判断しなければならなくなった。そして、マクスウェルの電磁方程式のほうが選ばれ、これに応じて、ミンコフスキー空間とローレンツ変換のほうが、この世界での地位を高めた。では、ガリレイ変換とニュートンの運動方程式は、どこで失敗したというのか。ダランベルシアンとの関係で、である。ここで、ガリレイテイルのようなものを出さなければ、まだ勝ち目はあっただろうに。

しかし、ガリレイテイルは、まぼろしかもしれない。このガリレイテイルが生まれるプロセスには、奇妙なルールが潜んでいた。実体のある縦と横と高さの次元に加えて、実体の見えない虚ろな時の次元の、4つに一つずつ条件式があるのだが、これらの条件に優先権があるのだという。特に優先されるのは、ガリレイ変換によって座標系が移動している次元である。これを移動次元としよう。

この移動次元(x)での、新しい移動次元の座標値(x’)は、変換前の移動座標値(x)と、移動速度(v)と時間(t)にかかわる移動距離(vt)によって決まる。

x’xvt

(6)

このときの2変数を、ガリレイ移動変数(x)と、ガリレイ時間変数(t)と呼ぼう。さらに、これには、変換前と変換後とで区別される。このとき、変換後の変数には「新()」を付けることにしよう。つまり、「新ガリレイ移動変数(x’)」と「ガリレイ移動変数(x)」や、「新ガリレイ時間変数(t)」と「ガリレイ時間変数(t)」があることになる。

一方、ダランベルシアンは、時間成分と空間成分に分けられる。

ダランベルシアン

□=(1/c2)2/∂t22/∂x22/∂y22/∂z2

 時間成分 (1/c2)2/∂t2

 空間成分 2/∂x22/∂y22/∂z2

 

(7)

このダランベルシアンの時間成分を調べる。このとき、これまでの解析法によると、ガリレイ変換の新しい移動次元値(x’)を決める時に、その移動次元値(x)と時間次元(t)が関係するから、これらの2変数がかかわるとして、次のように変形されるという。このとき、(6)式をxについてxx’vtと求め、(3)より、tt’と置き換えてもよいから、xx’vt’として、xf(x’, t’)の関数と見なし、合成関数の偏微分の公式にのっとって、次式のような操作を行うという。

xx’ vt

xx’ vt’

f(x’, t’) x’ vt’

∂f/∂t(∂f/∂x’) (∂x’/∂t)(∂f/∂t’) (∂t’/∂t)

(∂f/∂x’) (v)(∂f/∂t’) (1)

v ∂f/∂x’∂f/∂t’

∂/∂tv ∂/∂x’∂/∂t’

 

 

 

 

 

 

(8)

ここで、次の条件が利用されているが、これは、ガリレイ変換の式から得られる。

   ∂x’/∂tv,   ∂t’/∂t1

(9)

ダランベルシアンの時間成分に、新ガリレイ移動変数と新ガリレイ時間変数の項が入り込むが、偏微分の処理を2度繰り返すため、これらの項を2乗することになる。そして、新ガリレイ移動変数の偏微分2乗項と、新ガリレイ移動変数の偏微分と新ガリレイ時間変数の偏微分の積の項が二つと、新ガリレイ時間変数の偏微分2乗項が現れる。

2/∂t2(∂/∂t) {v ∂/∂x’∂/∂t}

=−v{(∂/∂x’) ( ∂x’/∂t) (∂/∂x’)(∂/∂t’) (∂t’/∂t) (∂/∂x’) }

(∂/∂x’) ( ∂x’/∂t) (∂/∂t’)(∂/∂t’) (∂t’/∂t) (∂/∂t’)

=−v {(∂2/∂x’2)(v)2∂x’ ∂t’)}

v (∂2∂t’ ∂x’)2/∂t’2

v2 (∂2/∂x’2)2v (∂2/∂t’ ∂x’)2/∂t’2

 

 

(10)

このうち、最後の一つが、新しい座標でのダランベルシアンへと組み込まれる。ダランベルシアンの空間成分については、そのまま、新しい座標でのダランベルシアン空間成分に変化する。かくして、ガリレイ変換においては、新ガリレイ移動変数の偏微分2乗項と、2倍の係数をもつ、新ガリレイ移動変数の偏微分と新ガリレイ時間変数の偏微分の積の項が、ダランベルシアンのガリレイテイルとして残る。

ところが、優先順位を変えて、ガリレイ時間変数の変換を最優先すると、このような「尻尾」は現れないのだ。

   t’t

(11)

ガリレイ変換においては、このように、「新ガリレイ時間変数(t)」と「ガリレイ時間変数(t)」は同一値である。つまり、変化しないのである。この両辺をtで偏微分すると、次式が得られる。

   t’/∂t1

(12)

また、次の式を導くことができる。

   t’t’

   t’/∂t’1

 

(13)

そして、これらの式から、次の式を求め、関数としてのt’を略して、作用素へと変える。

   t’/∂t1t’/∂t’

   /∂t/∂t’

 

(14)

つまり、このような関係のときは、次のように見なすことができるのである。

   t’∂t

(15)

 すると、他の変数も、同様に考えることができる。移動次元以外の空間次元であるyzはもちろんのこと、移動次元の次の関係式からも、同じ関係を導くことができる。

   x’xvt

   x’/∂xx/∂xv∂t/∂x1

   x’/∂x1x’/x’

   /∂x/x’

   x’x

 

 

(16)

 このようなことは、言葉(自然言語)より、数式のほうが分かりやすい。言葉を工夫しても、どんどん難しい表現になってしまう。さあ、これらの結果をダランベルシアンへと代入しよう。すると、ガリレイ変換の前後でダランベルシアンは同じになって、ガリレイテイルは現れない。

ガリレイ変換におけるダランベルシアン

□=(1/c2)2/∂t22/∂x22/∂y22/∂z2

(1/c2)2/∂t’22/∂x’22/∂y’22/∂z’2

=□

 

 

(17)

 これは矛盾していないだろうか。移動次元(x)の関係式から議論を始めたときは、ダランベルシアンに対してガリレイテイルが生じ、時間次元(t)の関係式から議論を始めたときは、ガリレイテイルは生じない。そのような優先権を決める理由が、何かあるというのだろうか。

 上記の解析から、問題部分を抜き出してみよう。次の枠に集めたように、まず、ガリレイ変換(3)の式の中で、次の(18)(19)2式がかかわっている。そして、ダランベルシアンの中で、時間成分の中に含まれている、時間変数tによる偏微分の作用素(∂/∂t)が、はたして、次の(20)のようになるのか、それとも(21)のようになるのか、ということが、ここでの問題だろう。

x’xvt

t’t

∂/∂tv ∂/∂x’∂/∂t’

/∂t/∂t’

(18)

(19)

(20)

(21)

(19)から(21)が生まれるのは、ごく自然なことである。ここの操作に疑問をはさむのは、かなり難しい。ガリレイ変換においては、時間は変化しないのである。「絶対時間」があるだけだ。

しかし、(18)から(20)へのプロセスは少し込み入っている。(18)は移行して(22)となる。このとき、(19)を利用して(23)へと変える。この状態で、x(24)2変数の関数fと見なして(25)を導き、関数fを取り除いて、(26)の作用素とするのである。

xx’ vt

 xx’ vt’

 f(x’, t’) x’ vt’

 ∂f/∂t(∂f/∂x’) (∂x’/∂t)(∂f/∂t’) (∂t’/∂t)

 (∂f/∂x’) (v)(∂f/∂t’) (1)

 v ∂f/∂x’∂f/∂t’

 ∂/∂tv ∂/∂x’∂/∂t’

(22)

(23)

(24)

 

 

(25)

(26)

 この操作に何かおかしいところはないのだろうか。式の変形や、偏微分の操作が誤っているとは考えにくい。ここで疑問に思うのは、はたしてx2変数の関数で表すことができるのかという点である。(24)から(18)に戻って、考えてみよう。ここでは、「x’2変数(x,t)の関数で表すことができるのか」と問うことになる。これをイメージすると、横軸がxで縦軸がtの平面グラフの上で、新しい座標値x’を決めるということになる。はたして、ガリレイ変換とは、このようなイメージなのだろうか。

 ガリレイ変換では、xは固定されていて、これに対して、定数の速度vを考え、これが時間tの変化に伴って、距離vtを決め、この移動距離の分だけ、x’の座標がずれるというものではなかっただろうか。このとき、仮にxが変化すると見た時は、逆にtが固定されていなければ、x’が一意に決まらないことになる。ガリレイ変換では、この11の対応が成立するのではないか。ここでは、単なる「並行移動」である。「回転」が入ってきたとしても、このような11の対応は、考慮されることだろう。すると、ガリレイ変換での変換式を2変数の関数と見なすという、上記の操作には、やはり問題がある。ここに矛盾の原因があると考えるべきだろう。

 この考えによれば、(8)の操作は、次の(27)となる。これなら(21)と一致する。

∂/∂t (∂/∂t’) (∂t’/∂t)(∂/∂t’) (1)∂/∂t’

(27)

 このような考察が正しいとすれば、ガリレイ変換はダランベルシアンに対して尻尾を生み出さないことになる。それなら、マクスウェル方程式は、ガリレイ変換で特徴づけられるユークリッド空間でも、何も問題なく存在することができる。ローレンツ変換は必要がなくなり、ミンコフスキー空間の意味にも疑問が生じる。ニュートンの運動方程式とマクスウェルの方程式の、どちらかだけを正確なものとして、その一方を近似式と見なす必要もなくなる。もちろん、ローレンツ変換を基礎にしているアインシュタインの特殊相対性理論にも、その影響は及ぶ。(2008.10.11)