黒月樹人のタバスコキメラミーム27「ローレンツ変換導出の謎」
Tabasco Chimera Meam 27 of K.K. as “Mystery of deriving Lorentz transformations”
黒月樹人 (KINOHITO KULOTSUKI, treeman9621.com)

 緒言

アインシュタインの特殊相対性理論[1]が間違っていることを調べ始めて、やはり、この問題へと戻って来たが、ここには、思った以上に複雑な状況が潜んでいることが分かってきた。アインシュタインの特殊相対性理論は、まず、ローレンツ変換を導きだし、ここから派生する現象について論じている。このローレンツ変換については、アインシュタインの方法だけではなく、さまざまな導出法が知られている。アインシュタイン以前のものもあれば、アインシュタイン以後のものもある。アインシュタイン以前の導出法としては、ポアンカレのものがあるようだ。しかし、ポアンカレが具体的に、どのような方法を用いたのかということは、あまり、はっきりしない。ポアンカレは、導出法について詳しく述べずに、その結果だけを論じる傾向がある。アインシュタイン以後のものも、いくつか知られている。このページでは、これらの導出法について考察する。

1. 有名な4方法

 ローレンツ変換の導出法については、主要なものとして、次のような方法が知られている。ダランベルシアンを利用するもの[2](ダランベルシアン法d’Alembertian method)。アインシュタインの特殊相対性理論におけるもの[1](アインシュタイン法Einstein method)。球の方程式を利用するもの[3](球法Sphere method)。マクスウェルの方程式を利用するもの[4][5](マクスウェル法Maxwell method)

ダランベルシアン法とマクスウェル法は、共通の矛盾を潜めている。しかし、この矛盾についての、私の発見を投稿中なので、この矛盾の詳細は、申し訳ないが、まだ明らかにできない。ただし、この矛盾については、幽霊関数の矛盾という名称を与えた。次に、アインシュタイン法についてであるが、これについても、私の発見が関係しており、これについても、詳細を明らかにすることは、まだ、できない。このアインシュタイン法においても、矛盾が潜んでいて、論理が断絶している。しかも、矛盾は二つある。これについては、仮想中間値の矛盾と幻想三角形の矛盾という名称を与えた。このときの仮想中間値の矛盾によって、ある誤差が比の形で組み込まれ、これがローレンツ因子の二乗となって作用している。また、幻想三角形の矛盾によって組み込まれた誤差の比は、まさしくローレンツ因子であった。アインシュタインの、これらの矛盾は、アインシュタインが導いた結果を利用すると、まったく明らかなものとして浮かび上がる。これらのことから、アインシュタイン法は、まったく無意味なものであることが分かる。しかし、このことを主張すると、ほとんど確実に拒絶される。ミューオンの寿命が延びていると判断された「証拠」の影響が、あまりに強い。しかも、素粒子の世界では、この特殊相対性理論によって、さまざまな計算が行われているという。原因の理論が破綻しているのに、結果の「証拠」と数式だけが生き残っているのだ。ここには大きな謎がある。

2. ラランの方法とラデックの公準

他に、その内容についての詳細は不明だが、これらとは異なるものと思われるものとして、ララン(V. Lalan) の方法がある[6](ララン法LALAN method)。これは、フランスのレヴィ・ルブロン(J. M. Lévy-Leblond) が再発見し、ジャン・ラデック (Jean Hladik) が「特殊相対論入門」[7]で解説しているというもの。ただし、この本はフランス語文化圏のもので、日本語文化圏はおろか、英語文化圏でも見つけにくい。ラランの論文[6]はフランスでの1937年のものであり、容易に入手できない。唯一、手掛かりがあるのはレヴィ・ルブロンの論文[8]だが、やはり入手方法が分からずにいる。ただ、日本語に訳されているジャン・ラデックの「アインシュタイン、特殊相対性理論を横取りする」[9]に、この方法の考え方の概略が述べられている。ここでラデックは、ポアンカレもアインシュタインも、ローレンツ-ポアンカレ変換 (ローレンツ変換をラデックは、このように呼ぶ) を一般的に証明していないと書いている。ポアンカレは、相対性原理を公準としてマクスウェル方程式の不変性と光速度の不変性を、ローレンツ-ポアンカレ変換が満たすことを示しただけであり、アインシュタインは光速度不変の原理を公準として、同様のことを示しただけであると、ラデックは判じている。それでは、このローレンツ-ポアンカレ変換を一般的に証明するということは、どのようなことなのか。そのようなことが可能であり、これまで見た、すべての方法が矛盾をもっていて、数学的に成立するものではなかったのとは違って、数学的に成立する、本物のローレンツ-ポアンカレ変換が存在するというのであれば、ミューオンや他の素粒子で生きているという、ローレンツ因子での比の計算が有効に作用しているのかもしれないという謎が解ける。

ラデックが主張するのは、光を含めた電磁気学とは独立な、次のような公準だけを利用するというものである。(1) 時空が均一であり、(2) 空間が等方であり、(3) 互いに一様な並進運動する座標系が存在していて、それらの座標系で、物理法則が同じであり、(4) 因果律が守られる。これらの公準は、純粋に時空だけの性質について論じていて、光や電磁波などの性質を利用していない。しかし、ラデックは、さらに、速度の逆二乗の次元をもつ「時空の構造定数」を導入すると書いている。これが、速度の限界として現れるというのである。この限界が、現在は、光速度として観測されているので、これを用いるというわけである。これで、ローレンツ-ポアンカレ変換を「証明」したことになるのであろうか。この「証明」の論理も、なんだか怪しい。

3. インターネットで見つけた他の方法

さらに、インターネットで、次の三つを見つけた。アインシュタインの二つの原理を利用するもの[10](二つの原理法Two Principles method) 長さの収縮の仮定を式にして利用するもの[11](収縮法Contraction method)。静止系と運動系が互いに離れてゆくことを観測できる、三番目の座標系を利用するもの[12](第三座標系法Third flame method)

一つ目のものは、韓国で認められている論文で、「ローレンツ変換の他の導出」というタイトルのものである。これは、サインとコサインで表現した直交行列を利用しているので、目を引くかもしれないが、仮定として、アインシュタインの (a) 相対性原理、と(b) 光速度不変の原理、の二つを組み込んでいる。これらの仮定を、簡単な数式表現に置き換えているので、論理の流れをたどりやすいが、これらの仮定は、アインシュタインの特殊相対性理論において採用されているものであり、この論理が破綻している以上、このアイディアを基礎においても、真の「証明」は得られない。

二つ目の収縮法も、長さの収縮仮説を、最初に持ち出してきており、かつ、その中に、ローレンツ因子が既に含まれているので、「結果」の中を膨らませただけである。

三つ目の第三座標系法は、かなり有望なものに思えた。厳密な議論によって、ローレンツ変換の初期設定の式を導いている。そして、ローレンツ変換の逆変換を作用させて、恒等変換になるということを条件の一つとして利用し、未定係数の一つを決定している。こうして、ローレンツ変換の中間式を、座標の速度uと未定係数aを含む、xtを変数とする式で、x’t’を、それぞれ表している。ここでaを定めるときの手法がユニークである。静止座標系Kと運動座標系K’を、どちらも相対的に動いていることを観測できる中継の座標系K”を考慮するというものである。こうして、静止座標系Kと運動座標系K’(相対速度u)関係による式と、運動座標系K’と中継の座標系K”(相対速度v)関係による式とが、等しくなるということを導く。説明のため、次のように書き下してみよう。

av2v2(1av2)au2u2(1au2)

 この論文を書いたロスティスラフ・ポリシチャク (Rostislav Polishchuk) は、これらの左辺がvだけに関した式で、右辺がuだけに関した式であるので、右辺と左辺が「定数」であると判じて、これをμと置いている。これが後にμ=-c2と仮定される。しかし、このときの判断に誤りがある。このような判断は、vuが完全に独立した変数であるときに、恒等式の解法として用いられるものであるが、このことは成立していない。中継する座標系K”から見ると、K系とK’系が左右に同じ速度で離れてゆくので、v=-u/2の関係がある。よって、上の等式は定数とならず、avauの関係式となるだけである。ここからは、これらの未定係数aの分身の値を決めることはできない。この方法も、無意味なものであった。

 4. まとめ

 ローレンツ変換もしくはローレンツ-ポアンカレ変換を導出するという、幾つもの方法について検討したところ、いずれも、数学的に矛盾なく証明されているものではなかった。ただし、ララン法については、資料を入手できていないので、ここまで強く主張できないが、有名な4方法をはじめとして、他に発表されている各種の方法については、私だけが知っている反論の根拠も使って、生き延びるものが一つもない。このように、各種の矛盾を利用してしか構成できないローレンツ変換の、特にローレンツ因子が、ミューオンや他の素粒子の寿命を延ばす計算に利用されているというのは、このとき残ってしまう、新たな謎でもある。

 補遺

  かなり論文調に書いたが、私自身の書いた論文が公表できないので、このような文章は、論文として、どこに出しても、まず受け入れてもらえない。ただ、それらの正式な論文が認められて、その内容についての詳細を公開できるようになれば、これも、それなりに直して、どこかに提出できるかもしれない。そのようなわけで、これは、将来の正式な論文のための草案もしくは、架空の論文のパロディのようなものである。(2008.11.17)

 参照資料

[1] Albert Einstein, (1905), "On the Electrodynamics of Moving Bodies", Annalen der Physik 17: 891–921

http://www.fourmilab.ch/etexts/einstein/specrel/www/

[2] 牟田泰三, 岩波講座 現代の物理学2 電磁力学 7章 相対論的不変性 7-1 運動系における電磁力学 c) Lorentz 変換 p.129p130

Taizo MUTA, IWNAMI lectures, “Electromagnetic Dynamics”, Chapter 7, Section 7-1, c) Lorentz transformations, p.129p130.  (Japanese book)

[3] EMANの物理学・相対性理論・ローレンツ変換の求め方

http://homepage2.nifty.com/eman/relativity/lorentz.html

[4] EMANの物理学・相対性理論・ローレンツ変換の別の求め方

http://homepage2.nifty.com/eman/relativity/lorentz2.html

[5] 杉岡幹夫, マクスウェル方程式におけるローレンツ変換不変性証明の誤りの発見

http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page013.htm

[6] V. Lalan, Bull. Sci. Math. France, 65, p.8, 1937.

[7] J. Hladik et M. Chysos, Introduction à la Relativité restreinte, Dunod, 2000.

[8] J. M. Lévy-Leblond, American journal of Physics, n°44, p.271, 1976.

[9] Jean Hladik, Comment le jeune et ambitieux Einstein s’est approprié la Relativité restreinte de Poicaré, 「アインシュタイン、特殊相対論を横取りする」, 深川洋一[], 丸善株式会社, 2005.

[10] Byung Soo Moon, Another Derivation of the Lorentz Transformation, Journal of the Korean Physical Society, Vol. 24, No. 6, December 1991, pp. 506507.

http://icpr.snu.ac.kr/resource/wop.pdf/J01/1991/024/R06/J011991024R060506.pdf

[11] Bernhard Rothenstein, A faster “World fastest derivation of the Lorentz transformation”

http://arxiv.org/ftp/physics/papers/0602/0602153.pdf

[12] Rostialav Polishchuk, Derivation of the Lorentz transformations.

http://arxiv.org/ftp/physics/papers/0110/0110076.pdf