タバスコキメラミーム31「ミューオン寿命の謎」
T.C.Meam 31 as “Muon life span mystery”
黒月樹人 (Kinohito Kulotsuki, treeman9621.com)

タバスコキメラミーム31「ミューオン寿命の謎」

 1. ミューオンの寿命の伸び

ミューオン(muon)という素粒子が、地球の大気上層部で生じる。宇宙空間を、高いエネルギーを持って飛来してくる、陽子による宇宙線が、地球の大気分子に衝突して、さまざまな素粒子を生み出す。このとき生じた素粒子の大部分は寿命が短く、なんとか地表に届くものとしては、ミューオンとニュートリノだけであるという。これは、宇宙線としての陽子が衝突したときに生じるパイ中間子が、2.6×108秒の寿命のあとで、別れて生じたものであるようだ。このときのニュートリノは、他の粒子などと反応する確率が極端に低く、これは、大部分が地球を素通りする。そして、残ったミューオンであるが、これの寿命は、地表の実験室で調べられたところ、2.2×106秒ということらしい。仮に光速に近い速度で走ったとき、およそ660mしか走ることができないという。しかし、文献[3] によると、「宇宙線に含まれるミューオンの速度は光速に近く、c0.995倍になっている」とあり、この速度で相対論の計算をして寿命が10倍に伸びると述べている。ローレンツ変換の式を使うと、確かに10倍となる。だから、ミューオンの寿命は10倍に伸び、6.6km走ることができて、地表まで届くことができる。

2. これは「証拠」となるものか?

しかし、この数字は、あまりにできすぎている。このときのミューオンの速度は、どのように測られたのだろうか。おそらく、ミューオンが発生した時を特定することはできないので、このような速度が計測できるはずがない。この値は、ただの推測値だろう。速度も計測されていないのであり、寿命としての時間も、やはり計測されているはずがない。このときの状況は、「速度」「時間」「距離」のうち、「距離」だけを確定しているだけで、「速度」と「時間」は推定しているだけなのであるから、明らかに「証明」にはなりえない。それにもかかわらず、このようなことがアインシュタインの特殊相対性理論の「証拠」だとされているのである。

3. 宇宙線シャワーの模式図

ミューオンを生み出す「宇宙線シャワー」の模式図 [1] を見ると、一次宇宙線としての陽子が大気分子に衝突して、「ジェット」と名づけられている「二次粒子」が発生するが、ここに、後にミューオンを生じるパイ中間子が描かれているものの、この中に「核子」の分岐があって、これがしばらく走ってから、新たな「ジェット」を生み出すことが描かれている。このことが事実であれば、何度かのジェットの後に、地表近くでパイ中間子が生じ、ここからニュートリノとミューオンが発生して、このミューオンが地表近くで計測された可能性も否定できないはずである。この可能性を、どのようにして打ち消したのだろうか。

 4. アインシュタインが生み出した式の矛盾

ところで、アインシュタインが導いたローレンツ変換 [2] の式は(1)である。

τβ(tvx/c2),  ξβ(xvt),  ηy,  ζz,  β1/(1v2/c2)1/2        (1)

 アインシュタインは、この式を導くときの解析で、y軸方向へ光を放ったときの状況を、次のような表現で、簡潔に記述している。原文はドイツ語だが、ここでは英語で記す。

 When

   y(c2v2)1/2t,  x’0                             (2a, 2b)

  Thus

      ηacy(c2v2) 1/2 and ζacz(c2v2) 1/2          (3a, 3b)

  英語では、When Thusだけであるが、日本語では、「(2)とすると、(3)が成立する」ということになろう。

 また、(2)の前に、アインシュタンは、次の(4)を記している。

   ηac[tvx’(c2v2)]                           (4)

(1)よりηy(2a)に代入して、(5)を得る。ここへ(4)を代入して、(6)を得る。ここには(1)βが含まれているので、(7)を得る。

η(c2v2)1/2t                   (5)

(c2v2)1/2t                  (6)

τβt                              (7)

この(7)から(8)とし、ローレンツ変換後の時間τは、静止系の時間tに対してβ1の比で小さくなると考えて、ミューオンの寿命の延びを説明する根拠となったのかもしれない。

   τ1                            (8)

(8)βを詳しく書いて変形すると、(9)式となる。ここにv0.995cを代入すると、τ0.1tである。これが、光速度に近い速度で動くものの時間の遅れなのだろうか。

τt(1v2/c2)1/2                    (9)

 しかし、この式は、重大な矛盾を抱えていた。(9)へ、ローレンツ変換式(1)τを代入し、さらに、(1)βを使って整理しよう。

   β(tvx/c2)t(1v2/c2)1/2

tvx/c2 t(1v2/c2)

tvx/c2 ttv2/c2

vx/c2tv2/c20

(v/c2)(xvt)0

v0  or  xvt                         (10)

 v0が成立するなら、運動座標系は存在できない。ここでは不適として、捨てておく。

このxvt(1) ξβ(xvt) に代入すると、β≠0として、(11)となる。

ξ0                             (11)

 この値は、ローレンツ変換の開始時の状況を示している。また、アインシュタインは、解析の中で、τ0のとき原点から出た光線がξの増大する方向へ進むときの関係式として(12)を記している。ここに(11)を代入して(13)を得る。

ξ                            (12)

τ0                             (13)

 (13)(9)に代入してv≠cとしてt0を得る。

 あるいは、(12)へと(1)ξτを代入すれば、次のようになる。このとき(10)を利用する。

β(xvt)(tvx/c2)

xvtctvx/c

cxvctc2tvx

cvtvctc2tv2t

0t(c2v2)

 やはり、t0を得る。これを(10)に代入してx0を得る。

これらの結果から、やはり、ローレンツ変換が成立しないことが分かる。(8)式でミューオンの寿命を計算するどころか、(8)式の、静止系の時間tも運動系の時間τも、いずれもゼロなのである。このような式を利用するのは、どう考えても、おかしい。

5. まとめ

 ミューオンは確かに地表で観測されているらしい。しかし、この現象を取り上げて、ただちに、特殊相対性理論の「証拠」であると判じるのは論理的ではない。まず、この現象についての、他の解釈法についての検討が不十分である。次に、特殊相対性理論から利用している式が、まったく論理的ではなく、部分的に(8)τ1を利用しているようだが、アインシュタインが導出したローレンツ変換式を適用すると、矛盾が現れ、これらの式が成立していないことが分かる。このような、論理的な根拠に乏しい数式群で構成されているものが、物理的に意味をもつ理論と考えられているのは、不思議なことである。

 参照文献

[1] 高坂玲加, 馳川香菜実, 2007年卒業論文 FADCを用いたμ粒子の寿命測定」のp.6の図

http://www.hepl.phys.nara-wu.ac.jp/thesis/4kaisei/hasegawa-takasaka2007/hasegawa-takasaka-2007

[2] Albert Einstein, (1905), "On the Electrodynamics of Moving Bodies", Annalen der Physik 17: 891–921 http://www.fourmilab.ch/etexts/einstein/specrel/specrel.pdf

[3] ジャン・ラデック, 「アインシュタイン、特殊相対論を横取りする」, 深川洋一[], 丸善株式会社 2005.