c07 腫瘍マーカー CEAとCA19-9

田中 毅(TANAKA Takeshi @ 9621 ANALYSIS)

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 CTスキャンのパラパラ画像

 2019年1月16日に行われた、大きな病院での担当内科医の診断では、明らかに分かる、CTスキャンの画像を見せながら、私が胆のうガンであることが示されました。
 肝臓もがんの転移があることも、かすかに分かります。
 私は3年前の、ゴブリンアイズの制作と市販のため、自分のCTスキャンの画像を何百枚と解析し、ある程度、内臓としての、いろいろな臓器がどのようなものであり、どこにあるかについては、学習し、理解していました。
 だから、色がついていない、白黒のCTスキャン画像(もちろんこれが原画像)を見るだけで、とんでもない状態になっていることは分かりました。
 町医者がエコー検査(超音波検査)で、胆のうが肥大していると説明し、その小さな写真は、大きな病院の内科医への紹介状にも入っていました。エコー検査での写真はもう一枚あって、肝臓の異質なパターンをとらえたもの。これらは原画像なので、もちろん白黒です。
 もし要求すれば、このエコー検査の画像も、患者の私なら、費用が掛かるかもしれませんが、手に入れることはできたでしょう。しかし、このあとCTスキャンをするので、その必要はないと思っていました。
 エコー検査の小さな写真では、胆のうがどれくらい肥大しているのかは、よく分かりませんでした。
 町医者の先生が、装置を私の腹部にあてて動かしながら、ディスプレイを見たときには、おそらくもう少しよく分かっていたことでしょう。時間が無かったからか、あるいは、そのようなシステムとなっていなかったからか、その記録ビデオは見せてもらえませんでした。
 CTスキャンの画像は連続したものではなく、パラパラ漫画のような、断片的な変化として、離散的に続くものです。
 大きな病院の担当医は、診察室のコンピューターのディスプレイに呼び出した、その画像をクリックし、パラパラ画像を何度も眺め、自分の診断が間違っていないことを確認していました。前に進めたり、後ろへと戻したりして。
 ディスプレイの1/4も使っていない、小さな画像でした。しかも、白黒です。これでは、細部の何かを見落としてしまうことでしょう。
 まあ、今回の私の胆のうガンに関しては、一週間の猶予をとらなくても、撮影した直後に、パラパラと何枚か送るまでもなく、決定的な一断面を見れば、直ちに、とんでもない異常な状態だということは分かったことでしょう。
 担当医は、どこかで
 「誰でもわかるように…」
というフレーズを加えていましたが、これには限定詞をつけておくべきです。
 「CTスキャンを見慣れている者なら」とか、「内臓の配置を学んでいる者なら」とか。
 たまたま私は、これらの条件を満たしている、数少ない患者の一人ですが、大部分の患者には、説明なしでは何のことかわからないのです。
 そのあたりのことを、大部分のお医者さんや歯医者さんたちは、ほとんど気づいていません。

 腫瘍マーカーという検査項目がある

 このとき、これらの画像が胆のうガンの姿を見せているということを、もう一つの証拠として示されたのが、12月27日に採取された血液についての、「検査結果報告書」です。
 担当医は、この表の「検査項目名称」のASTからγ-GTPまでに、ボールペンで、長い右閉じまるカッコを記し、その横にと添えました。これらが肝臓に関する指標だという意味なのでしょう。
 もうひとつ、ずうっと下の方へとび、CEA [1][2] とCA19-9 [3][4] を右閉じまるカッコでまとめ、腫瘍マーカーとメモしました。
 この腫瘍マーカーの値から、胆のうガンであることは明らかなので
 「実際にサンプルを採取してガンかどうかを確認する手続きには進まないで、よいでしょう」
と、私に確認を求めてきました。
 私は、どのようなことをするのかを想像しました。おそらく、細い管を腹部に差し込み、胆のうの一部からサンプルを採取するのでしょう。以前入院したとき、横腹から管が差し込まれ、それが肝臓の炎症部分にたどりついて、膿のようなものを外へと導きだすという、ささやかな手術を受けました。今どきは、こんなにかんたんに手術をしてしまうのか、と驚いたものです。しかし、腹部の筋肉を傷つけて管を差し込むことで、何日かベッドで寝た切りになります。自分で起きてトイレにもゆけません。まさか、採取してすぐに管を抜いて、ばんそうこうを、ぺたりと貼っておけばもとどおり、というわけではないでしょう。
 私は生体検査の必要はないことを了承しました。

 腫瘍マーカーという言葉は聞いたことがない

 私は腫瘍マーカーとしてまとめられる検査項目があるということを聞いて驚いていました。
 そのようなものがあるのだとしたら、3年前の入院時、ことはもっとシンプルに進んでいたはずです。
 そのときの若い担当内科医が、私の病気について
 「胆のうガンの疑いがある」
といっていたのを、いつのころか、かんたんに
 「この胆のうガンが」
と言ったとき
 「えっ、胆のうガンなのですか、胆のうガンの疑いがある、ではなかったのですか」
と聞き返しました。
 すると、その担当医は
 「あっ、胆のうガンの疑いがある、ということです」
と言い直したのでした。
 ある日
 「胆のうガンかどうかは、(腹部を)開けて調べて見ないと分かりません」
と言い、さらに
 「腹部を切開して、胆のうガンかどうかを見て、そうであれば、胆のうを切除し、転移が疑われる肝臓をほぼ半分ほど切り取ってしまう、という手術をすることになります」
という予定が、一方的に宣告されたのでした。
 このとき私は
 「お腹を開かずに、胆のうがガンかどうかわからないのですか」
と聞きました。担当医の先生は
 「残念ながら、ありません」
と言われました。
 やがて、話が医科大学での手術の予定へと突き進むころ、「疑い」という言葉はどこかに消え去り、「胆のうガン」という言葉が独り歩きしはじめました。
 医科大学での説明では、完全に胆のうガンという言葉だけがつかわれました。

 このようなやりとりを今思い出すと、血液検査で腫瘍マーカーを調べるという方法があったはずだと、疑問に思えてきます。
 あのころ、この腫瘍マーカーという言葉は全く聞いたことはないし、もし、それが行われていて、そこに胆のうガンの証拠が現れていたのなら、もっと論理的に私へ説明できたはずです。
 そこまで論理的な話になっており、理解できる筋道がついていたとしたら、私は、そのあとのいろいろな困難を受け入れたと思います。
 しかし、この担当医も、大学病院での担当医となるはずの内科医も、10月7日に撮影した4回目のCTスキャンの内容を見ることなく、話はもう決まっているとして、何も確認せず、ほとんど何も説明できずに、失敗すれば死ぬ可能性もあると語られたほどの、彼ら自身が呼ぶところの大手術へと私を送りこもうとしたのです。
 これでは、私は命を懸ける気にはなれません。

 CRP定量

 2019年1月16日のガン宣告の日、これらの腫瘍マーカーについて、さらに詳しい説明などしてもらえなかったので、家に帰ってから、インターネットで調べました。
 腫瘍マーカーにはいろいろなものがあり、ガンの種類によってグループ分けされています。
 このCEAとCA19-9という2つの腫瘍マーカーの組み合わせは、胆のうガンを特定するためのものでした。

 3年前の入院時には、入院時の3週間で11回の血液検査が行われました。さらに仮退院中の9月27日になぜか1回あって、合計12回の血液検査が行われています。
 これらについての検査時系列情報という表が残っています。
 このころ、若い担当医が私に説明したのは、CRP定量という項目のことでした。
 これについてネツトで調べたメモもありました。

 CRP  C11アクティブプロテイン、炎症や組織細胞の破壊がおこると血清中に増加するタンパク質のこと、C反応性タンパク、0.3mg以下が正常、C-reactive protein

 私が入院したのは、2016年の8月23日であり、その日の血液検査によれば、CRP定量の値は39.04でした。翌日には37.16、さらに二日経って28.62と下がり始め、入院7日目の29日に10を切って8.88、しかし、まだ0.3には程遠い値です。
 私はこのような表を受け取り、入院中の暇つぶしもかねて、これらの値をグラフに表示しました。定規がなかったので、ノートに手書きで線を引いて作ったものです。
 入院3週間後の仮退院日の9月14日で0.43とあります。
 仮退院後の9月27日に血液検査のため通院したのは、このためだったかもしれません。
 この日の結果を加えた検査時系列表のCRP定量は0.27となっており、担当医が赤いボールペンで二重丸を描いています。この値が0.3を下回っており、この意味については、私も理解していたので
 「これでもう、ふつうの体ですね」
と言ったと思います。
 しかし、これと胆のうがんの疑いによる大手術とは別問題のようでした。

 2016年の入院時の血液検査でのCEAとCA19-9

 入院時の検査時系列情報の表を、2019年の1月に見返して、そこに、CEAとCA19-9の項目があるものが1枚あることに気づきました。
 しかし、何も測定されていない、と思ってしまったのは、私の早合点で、その表の右端にある1回だけ測定されており、それだからこそ、表の項目となっていたのです。
 それは仮退院日の9月14日のもので、CEAが0.43、CA19-9が47.6となっています。仮退院日はごたごたしていたので、私にていねいに話す時間がなかったのでしょう。
 しかし、これらの値については、論理的な説明なら素直に聞く私には、きちんと説明しておくべきだったと思われます。それがどれだけ重要なことだったかということが、2019年の今の私には分かります。

 2019年の血液検査の結果の表には、これらの項目についての基準値が記されています。
 それによると、CEAの基準値は5以下であり、CA19-9は42以下となっています。
 2016年9月14日の値(基準値)は、CEAが6.6(5以下)CA19-9が47.6(42以下)でした。
 CEAとCA19-9はともに基準値を少し少し上回っていますが、これでは決め手にならなかったのでしょう。

 私は医師ではありませんが、ここ何か月かの間に学んだ知識と経験により、仮に3年前の私が、仮に架空の医師としての、私の患者だとしたら、このような段階で命を懸けた手術へと突き放してしまわず、免疫力の高め方のことを詳しく説明し、生活のいろいろなパターンを変えることや、いろいろな問題が起ったときの対処の仕方についての注意を加え、通院治療という形で、経過観察してゆくと思います。

 2019年1月16日の腫瘍マーカー CEAとCA19-9

 2019年1月16日、CTスキャンの画像をバラバラと見せ、これで決まりだというのに、さらに追い打ちをかけるかのように、担当医は、血液検査の表にかっこと腫瘍マーカーをボールペンで書き込み
 「さあ、この値を見ろ」
と、私は、まるで、そう言われたかのような気がしました。
 このときの2つの腫瘍マーカーの値は、CEAが26.2(5以下)であり、CA19-9が1299.6(42以下)でした。
 重苦しい沈黙の時間が続きました。
  (Written by TANAKA Takeshi, April 28, 2019)

 参照資料

[1] 検査項目 CEA
●検査の目的 CEAは癌の存在を示唆する腫瘍マーカーの一つです。癌が発生すると、特殊な蛋白質、酵素、ホルモンなどを作り出します。CEAは胎児の早期の受精卵細胞と共通する物質で、この数値が高くなる場合、大腸癌、肺癌などの消化器系の癌の可能性が考えられます。
 ただ、個人差が大きく、すべての癌患者で異常が見つかるわけではありません。
 早期発見には不向きですが、病気の進行の程度によって数値が上がるので、癌の経過を見る場合や再発、転移の可能性を見る場合などに有効な検査です。
●基準値 基準は1ミリリットルの血液のなかに5ナノグラム以下。なお、多量喫煙者では比較的数値が高くなる場合があります。
●異常値の場合に考えられる主な疾患 異常値を示す場合、悪性腫瘍(膵癌、大腸癌、胃癌、胆道癌、原発性肝癌、転移性肝癌、食道癌、肺癌、乳癌、甲状腺癌など)を疑い、他に、肝硬変、肝炎、膵炎、甲状腺機能低下症などでも上がることがあります。
●受診時または検査時の注意点 癌の検査技術は年々進歩しており、早期の段階で発見できれば治癒も不可能ではありません。毎年、定期的に健診を受け、その際、CEAも受けて変化がないかどうかのチェックを受けましょう。タバコを吸っている人でCEAの値が高い場合は、1〜2ヵ月禁煙して、値が下がるかどうかを見る必要があります。また、測定方法によっても値が違いますので注意しましょう。

[2] 腫瘍マーカー検査
CEA
1.何がわかるか-----基礎知識
CEAは、もともと胎児の消化器組織だけにみられる蛋白の一種です。
消化器系の癌患者の血液に多いことから、これらのスクリーニング検査に用いられます。
癌の手術や治療後の癌の再発・転移などの発見にも役立っています。
2.異常値-----疑われる病気や異常
結腸癌 胃癌 膵癌 甲状腺癌 肺癌
検査詳細情報
3.どうすればよいか-----日常生活上の注意
CEAが中等度以上高値の時は、消化器系を中心とした病気診断のための検査を受ける必要があります。
消化管では、注腸X線検査、大腸内視鏡検査、胃透視X線検査、胃内視鏡検査をする。
肝臓、胆のう、膵臓関係では、腹部超音波検査、CT検査を行います。
これらの検査で異常がない場合は、肺、甲状腺、乳腺、卵巣、子宮など、全身の検査が行われます。

[3] CA19-9 CRCグループ → シー・アール・シー → よくある検査のご質問
質問 (空欄) 回答
 CA19-9はヒトの膵管、胆管、胆嚢、唾液腺、気管支腺、前立腺、胃、大腸、子宮内膜に局在し、これらの癌化により大量に産生されます。
 特に、膵癌、胆管癌、胆嚢癌で80〜90%、胃癌、大腸癌で30〜50%の陽性率を示し、消化器系癌の腫瘍マーカーとして最も多く利用されています。ただし、早期癌での陽性率は低くスクリーニングには不適で、治療再発のモニターとして有用です。
 一方、胆嚢ポリープや胆石では基準値内ですが、胆管炎を併発した場合や急性・慢性膵炎、胃炎、急性・慢性肝炎、肝硬変などの良性疾患でも100U/mLを超える異常高値となることがあり、臨床所見などもふまえて総合的に判読します。
 消化器系以外では肺癌や卵巣癌、子宮体部癌で陽性となり、子宮内膜症や卵巣嚢腫などの良性婦人科疾患、気管支炎、気管支嚢胞、肺結核などの良性呼吸器疾患でも上昇します。また、10〜20代の女性や妊婦、糖尿病でも軽度上昇することがあります。
 さらに、慢性胃炎治療薬の「スクラルファート」を内服している患者や溶連菌感染症で一過性の異常高値を示すことが知られています。
 ところで、CA19-9は血液型抗原の1種であるルイスAにシアル酸が付加した糖鎖抗原であるため、日本人の約10%に存在するルイス式血液型陰性者では癌化によっても上昇しない偽陰性を示します。

[4] CA 19-9 ウィキペディア
臨床応用
 日本では、1980年代前半から利用されはじめ、CA19-9は消化器がん(特に膵・胆のう・胆管がん)で陽性率が高いため、診断補助として有効とされるが、大腸がん、肺がん、乳がんなどでも陽性を示すため、CEA、AFPなどのマーカーと併用される。
 また、抗がん剤治療の効果、再発のモニターとしても使用される。
 なお、胆石、原発性胆汁性胆管炎症、肝硬変症、慢性肝炎、糖尿病、婦人科などでも上昇し偽陽性を示す事があるが、値がある一定以上に高ければ通常はがんを疑う理由となる。
 但し、ルイス陰性者では型糖鎖からルイスA糖鎖が作れないため当該マーカーは使用できない。
 試薬キット間で数値の差が生じるため、つまり医療機関が変わると値が異なる場合がある。
 また、人間ドックにおける陽性的中率は2.5%程度とする報告がある。

 

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