c08 ガン宣告のあとの診察で私は定期的な血液検査を願い出た

田中 毅(TANAKA Takeshi @ 9621 ANALYSIS)

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 ガン宣告7日後 (2019年1月23日)

 ガン宣告が行われたのは、2019年1月16日でした。
 その日の診察の最後に述べられたのは、次回として、近親者を一人連れてくるということでした。
 私に一番近い近親者は母親ですが、かなり高齢でもあり、2018年の夏に病に倒れて、とても連れてくることは出来ませんし、担当の医師も、それは望んでいませんでした。
 次の近親者は兄です。医師は妥当な対象者だと考えましたが、ここでは詳しく述べられませんが、そうではありません。いろいろな意味で、私の中では消去しておきたい対象者でした。
 しかし、この状況では、そのようなことを主張できません。
 やむなく了承して私は、実家の近くにある兄の家を訪ね、担当医の言葉を告げ、1月23日にその病院へ来てもらえるように頼みました。

 私は病院に自転車でゆき、兄の車の到着を待ち、病院の入口で兄の車の駐車券をあずかりました。このようなケースなら無料になるかもしれませんが、確認していなかったので、患者の私が車でやってきたことにして、後の手続きで駐車券を無料モードに変換してもらおうとしたのです。
 待合室で並んで座っているとき、いつになく兄は多弁で、ここ何年か、いかにして自分が苦労してきたかという物語を始めます。

 視察室に二人で入り、担当医は一週間前の内容を再び兄のために説明しだしました。
 兄にとっては、私がガンになったことは自業自得だということのようです。
 あえて反論も説明もする気力もなく、この日の診察をさらりと流そうとしていたところ、兄は意外なところから援軍の狼煙(のろし)を上げてくれました。
 兄が知っている近くの同業者でガンになって入院手術した人は、すべて、そのまま病院から戻ってこなかったというのです。
 「それは魚屋ではなく肉屋のことやないの」
と私がきくと
 「魚屋もみんなや」
と兄が言います。
 「知らんかった」
 「そやさけ、いまさら入院して手術したらあかん」
 入院も手術も、はなから無理だと、担当医から言われていました。
 意味もないやりとりを兄弟でやっているのを、担当医は黙って聞いていました。
 抗がん剤の治療も、私の経済的な事情で無理だということを確認して、この日の診察は終わりました。兄に、そのような経済的な負担をしてもらえそうもないということは、私たち兄弟の雰囲気で理解できていたことでしょう。

 兄と私が診察室を出ると、前は診察室に同席していた看護師さんが近づいてきて、この病院にある、がん患者のグループワークのパンフレットを見せ、その説明を始めます。
 私はパンフレットを受け取り、話を聞いているふりをして、お礼を言って、玄関へと向かい、内科の受付で無料モードにしてもらった駐車券を渡して兄を見送り、本日の支払いへと向かいました。

 この日の支払いは、初・再診料の73点だけの220円でした。私の保険は3割ですから、0.3で割ると733円です(5月に来た書類によると730円となっていた。10円未満は切り捨てらしい)。

 ガン宣告のほぼ1月後 (2019年2月13日)

 前回の診察の最後に担当医が私に要求したのは、ほぼ一か月後の2月13日にやって来て、それまでに、お母さんなどとも相談して、今後の治療方針について決めてきてほしいということでした。
 2月13日を待つまでもなく、兄を呼んで状況を説明し、病院としての証人確保のための手続きを行う前の、ガン宣告のあった1月16日の段階で、私の治療方針は決まっていました。
 (1) 手術、(2) 抗がん剤治療、(3) 放射線治療 の、このような病院のカードを1枚も引かないということです。
 そして、静かに、残された時間を、自分の好きなことに使って、ガンで命が尽きる瞬間を待つ、という、担当医師が思い描いているストーリーを演じるということです。

 この日、最後に私は、この担当医に、次の血液検査の日程を決めてもらい、それに、CEAとCA19-9の検査項目を入れてほしいとお願いしました。
 担当医の顔が急に曇り
 「抗がん剤の治療をしない以上、これについて私が説明することはできませんよ」
と、こちらが理解できないようなことを言います。
 ここで私は、前、抗がん剤治療は生きる時間をのばすだけだとおっしゃったではありませんか、と言いたいのを、ぐっとこらえて
 「かまいません。私が知りたいのです。どのようにして死んでゆくのかを知る権利は、私にもあるでしょう」
と強気にせまります。
 次の血液検査の日は3月27日と決まりました。3ヶ月では間が空きすぎるし、1ヶ月ではせわしすぎると、言葉をやり取りし、とりあえず、このように決めました。
 このとき、この血液検査の項目について、さらに詳しく決めておく必要があったということが分かったのは、のちのことです。

 この日の支払いも、初・再診料の73点だけの220円でしたので、実際は733円(正しくは730円)です。
  (Written by TANAKA Takeshi, April 28, 2019)

 

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