c13 ガン細胞 ブドウ糖 ビタミンC ケトン体

田中 毅(TANAKA Takeshi @ 9621 ANALYSIS)

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 ブドウ糖はガンの餌である

 このフレーズのことは、ネットで、ガン治療について調べていたときに知りました。正確な記録をメモしてありませんでしたが、本を読んでゆくと、確かにそうであるということは、はっきりしているようです。
 「がんが自然に治る生き方」[2] に次のような記述があります。

 砂糖、肉、乳製品、精製食品はノー
 がんから劇的な回復を遂げたほとんどの人は、治療のために、砂糖や肉、乳製品、精製食品の摂取は減らすかやめたと話していました。
 砂糖の話からはじめましょう。…… がん細胞が健康な細胞よりずっと速く砂糖(ブドウ糖)を消費・代謝するのは、疑いのない事実です。PET(陽電子放射断層撮影)画像の撮影では、その性質を利用しています。…… ブドウ糖が集積するのは、がんの疑いが濃厚な場所です。がん細胞は正常細胞の10〜15倍量のブドウ糖を消費することが分かっています。
([2] p23, 太字部分は田中毅による)

 私が肝臓に大きな炎症部分をもって入院していたとき、事務の方が病室に来られて、同席していた母の住所を聞きました。しばらくして、4人部屋の入院患者の一人が、私たちに話しかけてきました。なんと、彼は私の実家の近所に住んでいた人だったのです。彼がベッドの中で聞いた私の実家の住所と、彼の住所は、番地の数字が少しだけ違っていただけだったのです。私の実家は魚屋でしたので、近所の人だったから、彼は父のこともよく知っていたそうです。
 彼は都市でタクシーの運転をしていたそうですが、引退して故郷に帰って来たものの、食道がんで食事ができなくなり、入院し、点滴で命をつないでいました。日中は、いろいろな人がお見舞いにやって来て、ベッドに横たわったまま話し合っていました。
 あとで本人から
 「もうこれで、会いたい人とはほとんど会った」
と聞かされました。
 もう自分が回復してゆくという可能性はないということを知っていて、命がある間に、おとずれてくれるすべての人にお別れをしようと思っていたようです。
 いつもベッドに横たわり、毛布をすっぽりとかぶって、その中から声だけをかけてくる彼の顔を、私は一度も見たことがありません。
 なんども、今の境遇を悔やむように
 「点滴で生きているだけだ」
とも、こっそり私につぶやきました。
 その点滴の主成分はブドウ糖です。
 今から思うと、その人は点滴で生かされていたのではなく、ガン細胞が成長してゆくようにされていたのです。
 私は3週間で仮退院することとなり、彼に話して、その病室から消えました。
 少しして、実家の母から、その人が亡くなったことを知らされました。

 「炭水化物が人類を滅ぼす」

 私たちがブドウ糖を直接食べることは、めったにありません。あるとしたら、ブドウ糖で作られたお菓子でしょうか。あろうことか、2019年の1月にガン宣告されるまで、2018年のころ、私はそのブドウ糖のお菓子を、時々買って、美味しいと感じて食べていたのです。きっと、私に知られず成長していたガン細胞が、現代の異常なグルテンが腸で吸収されたあと脳へと侵入し、ある座位にとどまり、もっとパンを食べろと刺激するように、私の意識をコントロールしていたのだと思います。
 ところが、私たちの食生活ではあたりまえの砂糖は、ブドウ糖と果糖が1分子ずつ酸素原子の2本の腕でつながっているものなのです。砂糖が体内で消化されると、ブドウ糖と果糖が吸収されてゆくことになります。
 糖類の分子構造[4] というサイトを見ればわかりますが、でんぷんはブドウ糖がいくつもつながったものです。
 ブドウ糖や砂糖、そして、ご飯やパンの米粉や小麦粉を構成しているでんぷんなど(実は分解されない食物繊維も入りますが)を総称して炭水化物といいます。これらはすべて(食物繊維は除く)、消化されて体内に吸収され、ガン細胞を含む、私たちのあらゆる細胞のエネルギー源として利用されるのです。
 ところが、次の本は、こんな常識に反するかのような、わけのわからないタイトルです。

 「炭水化物が人類を滅ぼす」糖質制限からみた生命の科学[5]、夏井睦(なついまこと)・著、光文社新書663、2013-10-20初版

 この本を私は、ガン宣告されるずうっと前に読んでいました。
 今読み返すと、説明してゆきたい、いくつものテーマが記されています。それらを取り上げてゆくと、このページも収拾がつかなくってしまいます。エピソードとして強く覚えていたことは、次の2点です。

 (1) 19世紀のヨーロッパで産業革命がはじまり、人々が都市に集まって、労働者として生活したのは、砂糖という魔法の妙薬にひかれたから。
 (2) 江戸時代に、人々(その多くは男の職人)が江戸に集まって、労働者(職人)として生活したのは、銀シャリ(白米)が腹いっぱい食べられたから。

 このエピソードは、ただのはじまりの物語であり、ヨーロッパだけでなく、日本を含む世界中の豊かな国々では、ごくあたりまえのように砂糖が手に入り、紅茶に砂糖を入れて飲む習慣がなくても、清涼飲料水や数々のお菓子などを通して、明らかに砂糖中毒となって、その結果、歯医者に通っています。
 私が水口に住みだし、砂糖をほとんど摂らない食生活を続けてきた、この4年間は、それまで何度となくお世話になって来た歯医者へまったく行く必要がなくなりました。こんな人間ばかりだと、きっと歯医者さんたちは失業してしまうことでしょう。

 最近、区長の新旧引継ぎ会があり、かんたんな討議のあとは酒と肴の宴会です。このとき、私の隣に座った、いつもいろいろな会議で必ず手をあげ、割れた感じのする大きな声で、自らの存在を誇示するかのような発言を繰り返してきた一人の区長が、目の前に並べられた料理のうち、タコの煮ものにまったく手をつけず残そうとしています。
 「タコは嫌いなんですか」
と私が聞くと
 「食べられへんのや」
 「へえ〜、なんでですか」
 「歯が悪いからや」
 「虫歯くらいで……」
 「総入れ歯やから、噛まれへんのや」
 「総入れ歯って、私より少し年上なだけでしょ」
 「(おまえは)自分の歯か」
 「差し歯は何本かありますが、前部歯茎(はぐき)にくっついています」
 「ええなあ」
 私は彼の声がなんとなく割れて聞こえる理由が分かりました。
 私の家に電話がかかって来て
 「ご主人さまいらっしゃいますか」
と聞かれたとき
 「いいえ、いません」
と答えると
 「お父さんかお母さんはいらっしゃいませんか」
 あるいは
 「息子さんですか」
と聞かれるのは、私の声が若く聞こえるからのようです。
 きっと歯の構造が、虫歯の治療はしているものの、若いころと同じであり、どこからも空気がもれたり、入れ歯のためのノイズが生じたりしないからでしょう。

 もうひとつ、日本人のほとんどすべての人が、今や白米中毒に陥ってしまっていますが、これが、江戸時代の江戸における食文化から始まったということを知りました。
 これも区長の新旧引継ぎ会のときの宴会でのことですが、隣に座った別の区長と打ち解けてきて、いろいろなおしゃべりをしました。こちらも、私よりほんのわずか歳上なだけです。
 彼も私も(第二次世界大戦の)戦後生まれで、まだ日本の大部分の人々が貧乏で、いっしょうけんめい働いて食いつないでいたころの話です。
 「白いご飯なんか食べられなかったなあ」
と彼が言います。
 「じゃあ、主食は何だったのですか。麦飯ですか」
 「麦飯ならいいほうで、ほとんど雑穀だった」
 「へえ〜、今なら、立派な健康食ですよ」
 「畑に生えていた」
 「すごい。そんなところもあったのですね」
 「あんたのとこは、何食べてたんや」
 「私は信楽で、そのころ陶器産業は盛んだったし、実家は魚屋だったので、生まれたころから米でした」
 「ええなあ」
 「今から思うと、標準米だったか、いちばん安くて、あまりおいしくないものでした」
 「それでも、米は食べられたんや」
 「魚も、売れ残りをいやというほど。だから、骨太の、こんな体になったんです」
 私と同じ時代を生きてこられた人で、同じ甲賀郡(こうかぐん、今の甲賀市と湖南市の7町)の、違う町のどこかで、米をじゅうぶんに食べられなかったところがある、ということを始めて知りました。
 白米と、それ以外の食事をしていたのは、江戸時代だけの話ではなかったのです。ほんの何十年かまえ、私たちが生まれ育ち始めたころまで、ずうっと続いていたのです。
 そして、私たちが育ってゆく間に、日本全体が豊かになって、食文化が変わってしまい、同時に、ガンや糖尿病をはじめとする生活習慣病が増え始め、人々は(栄養失調からの)結核で死ななくなってきたかわりに、ガンや脳梗塞や心臓病、さらに糖尿病や、これらの影響で体力を失ったための、ごくごくシンプルな肺炎で、この世に別れをつげるようになってきたのです。

 この本は、このようなエピソードにつながる内容だけで構成された本ではありません。
 炭水化物と人類の生活について、科学的な論証により、多角的に分析されたものです。
 今読み返してみると、すばらしい内容の本だと分かります。

 ビタミンCをがん細胞はブドウ糖と間違える

 ガン治療の「代替療法」の一つとして、大量のビタミンCを体内に取り込むということが、今や現実に行われるようになってきたようです。
 これがなぜ効くのかということを説明した、ビタミンCをがん細胞はブドウ糖と間違えるという説明を、どこで知ったのかは忘れてしまいましたが、ネットを検索して、ブドウ糖とビタミンCの分子構造を調べてみる[6] と、たしかにそっくりです。
 ブドウ糖が体内にほとんどなく、かわりにビタミンCがあると、ブドウ糖を大量に欲しがっているガン細胞は、分子構造がよく似たビタミンCを取り込んでしまうのだそうです。
 ところが、ビタミンCは細胞の中でエネルギー生産をすることができません。
 このため、だまされたガン細胞が弱ってしまうというメカニズムです。

 「ケトン体が人類を救う」

 この本のタイトルは明らかに前述の「炭水化物が人類を滅ぼす」[5] を意識しています。
 この本も私は、ガン宣告以前に買って読んでいました。

 「ケトン体が人類を救う」糖質制限でなぜ健康になるのか[7]、宗田哲男(むろたてつお)[8]・著、光文社新書786、2015-11-20初版

 この本についても、ガンと宣告される以前には、いったい何のことか、よく分かりませんでしたが、ガンと宣告されてから読み直すと、これからのガン治療の指針となる、とても重要な本だということが分かるようになりました。
 この本の最終章に、次のような部分があります。

 がん細胞の大好物はブドウ糖です。ビタミンCは分子構造がブドウ糖に似ているので、がんが間違えて取り込みます。ところがビタミンCはガン細胞の中に入ると、過酸化水素という活性酸素を発生して、がん細胞をやっつけてくれるのです。([7] pp317-318)

 ここだったかのか、と今思いました。
 これが書かれている節のタイトルはガン細胞が利用できないケトン体です。
 これについては、この節ではさいしょに「がん細胞の子の性質を利用して…」とあるだけで、詳しい説明は見つかりません。おそらく、その前の節「がん細胞はブドウ糖が大量に必要」のところに、このことの解説がありそうです。適度に引用しづらい文章なので、私が要約します。

 がん細胞は、嫌気性解糖系で、ブドウ糖からエネルギーを取り出します。
 この嫌気性解糖系というのは、酸素を使わない方法です。

 私が陸上競技のトレーニングを指導していたころ、このための能力を発達させるもの[9] に、クレアチンリン酸と添えていました。生徒たちはそのままこの言葉を憶えてしまい、意味も分からず、この種のトレーニングを行っていました。
 陸上競技の短距離のトレーニングとして、私がもう一種類生徒たちにさせていたのが、グリコーゲン系というもの[10] です。

 こちらはミトコンドリアを使う酸素を使ったエネルギー代謝と記されています。
 ガン細胞は、こちらのシステムを使わないのです。使えないと言ってもよいと思います。
 この本のどこかにきっと記されているはずですが、次のことを確認しておくべきです。

 ケトン体は酸素を使ったグルコーゲン系でエネルギー源として利用される

 このことを、著者の宗田哲男は、この一言に集約しています。

 新生児はケトン体で生きている!([7] p53)

 これは新たな発見なのだそうです。

 もう一つ、この本で知ったことを、今探してみました。ありました。

 …… 脳はケトン体もエネルギーとすることが可能です。……
 ケトン体はグルコース(ブドウ糖)に代わるエネルギー源であるばかりか、むしろケトン体のほうが、すぐれた脳のエネルギー源であることも明かされつつあるのです。
([7] p312、( )をつけての補足は田中毅による)

 このことは重要な事実です。
 ブドウ糖がガン細胞を育てるということを、医者はきっと知っているはずです。それなのに、がん患者で、もう点滴でしかエネルギー補給が出来ないのに、ガン細胞をさらに増殖させるブドウ糖を入れた溶液しか使わないのは、これまでの常識として脳へはエネルギー減としてブドウ糖しか受け入れられないということが、ずうっと信じ込まれてきたからでしょう。
 ところが、そうだとしたら、宗田哲男が明らかにしたように、ケトン体で生きている新生児たちの脳は、すぐにエネルギー不足となってしまうはずです。
 事実はどうか。
 そんなことはありません。脳細胞は生まれた時点で、じゅうぶんに発達して、これからの人生のために備えています。赤ん坊がみんな頭でっかちなのは、脳がすでに完成していて、あとは神経の新たな分岐により、さまざまな思考のためのプログラムを組み込むためです。

 かつて、私たち人類の先祖は、何度も飢餓状態をきりぬけてきました。
 そのとき、人類の祖先たちの脳は、エネルギー源のブドウ糖が得られず、みんな狂い死んでしまったというのでしょうか。
 おそらく、米や麦やジャガイモのような炭水化物も、魚や獣の肉も、野菜や木の実すら食べらなかったとき、身体に蓄えてあった脂肪からケトン体を作り出して、脳をふくめ、身体の全てのエネルギー源としてきたのだろうと、宗田哲男は仮説を立てています。

 このことは自分の体で実感することができます。
 担当医が、私が少し痩せたことに気づき、ガンのためかと疑って聞いてきたとき、私は
 「意図的に絞りました」
と答えました。担当医が
 「食事を制限したのですか」
と聞き、私は
 「食べたいだけ食べています」
 「……」
 「食べるものを変えただけです」
と続けましたが、このとき、私はケトン食を実践していて、すでに体についていた脂肪を使ってしまった後だったのです。
 それからは、この体重を維持するため、ケトン食の体系のもとで、食べたいと思える分だけ、なんの我慢もせずに食べています。
 私の脳細胞は、おそらく、ブドウ糖よりケトン体に、そのエネルギー源を頼って、このページのことをいろいろ考えていると思います。
 なぜなら私は、すでにケトン食の最終レベル(ひょっとすると、一つ前のレベルかもしれないが)を実行していて、砂糖やパンやコメはもちろん、消化されてブドウ糖になるものをいっさい摂っていないからです(たくさん食べている野菜や果物などに少し含まれているらしいので、完全にというわけではありません)。

 ケトン体は糖尿病とガンに打ち勝つ秘密兵器

 実は、ガン宣告をされてから、本屋で見つけた、次の料理本の解説部分を読んだことにより、これまでの多くの本の知識が、一つの流れとして、すっきりと理解できたのでした。

 免疫栄養ケトン食で がんに勝つレシピ [11]、管理栄養士 麻生れいみ・著、医学博士 古川健司・監修、光文社・刊、2017-8-20初版

 この本の内容をかんたんに表現したところがあります。

 がんの好物である糖質を制限し、兵糧攻めにすることで、摂取する油の質を見直してがん細胞の鎧を柔らかくし、がんを小さく弱くしていくのが免疫栄養ケトン食です。([11] p13)

 私はこの本により、正しい油の選択など、多くの具体的な指針を学びました。
 この本で説明されているケトン食の体系は、ガン細胞と闘うだけでなく、炭水化物だけを減らしてゆくので、血糖値が上がるわけがありません。
 理論的にはそうなのですが、ここに抜け穴が一つあります。
 肝臓が脂質などからブドウ糖を再生産するメカニズムがあるのだそうです。
 このため、完全に炭水化物を断っていたにもかかわらず、2回目の血液検査の結果、私の血糖値は150という値だったと考えられます。まあ、200を越えていた値から150へ減少したのだから、これで悪いわけではありません。
 ともかく、より本質的な糖尿病の指針であるヘモグロビンA1cの値を8.8から7.7へと減らせたわけです。私はこの方法が確実なものであり、間違っていないということを確信しました。

 ところで、すでに、このような、がん治療のための、分かりやすい本が出されていることに、私はとても驚きました。
 この本は、一見すると、たんなる料理本のように見えます。
 しかし、その内容のいかに深く重いこと……
 私はその、ぼかんと空いた口をふさぐため、この本を参照しながら、免疫栄養ケトン食をつくって、せっせと食べています。
  (Written by TANAKA Takeshi, May 2, 2019)

 参照資料

[1] 「がん」では死なない「ガン患者」、東口高志・著、光文社新書818, 2016-5-20初版
[2] 「がんが自然に治る生き方」、ケリー・ターナー・著、長田美穂・訳、プレジデント社・刊、2014-11-23初版
[3] 「免疫革命」、(元新潟大学大学院 医学部教授)安保徹・著、講談社インターナショナル・刊、2003-7-11初版
[4] 糖類の分子構造
[5] 「炭水化物が人類を滅ぼす」糖質制限からみた生命の科学、夏井睦(なついまこと)・著、光文社新書663、2013-10-20初版
[6] ブドウ糖とビタミンCの科学構造は極めて似ている
[7] 「ケトン体が人類を救う」糖質制限でなぜ健康になるのか、宗田哲男(むろたてつお)・著、光文社新書786、2015-11-20初版
[8] ダイエッター必読!ケトン体で体内エネルギーの大改革を起こせ
[9] 60mまでの(ほぼ全力)ダッシュの反復など、4本×(4〜6)セット
[10] 100mから300mまでの距離の、全速走に近いペースでの反復、本数やセット数は多くない [11] 免疫栄養ケトン食で がんに勝つレシピ、管理栄養士 麻生れいみ・著、医学博士 古川健司・監修、光文社・刊、2017-8-20初版

 

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