第6岩窟 踊るアリス

黒月樹人 (KULOTSUKI Kinohito)

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第6岩窟 [名]踊るアリス [色]チョコレート [岩]リソイド岩

これは、何枚かのレリーフがパノラマ状にならべてあった。これらの一つずつについて、順に語ってゆこう。

@いま――レディのアリス 画面中央に踊るアリス(ネコ型シナモン)の姿。大きくU字形に開いた胸元や、肘までの袖口や、ワイヤーで膨らませたスカートの裾などにフリルのついた、ピンクのドレスを着て、同色のトウシューズを履き、片足で体を支えつつ、もう片足の爪先を伸ばして、少し地面から持ち上げている。腕は水平と垂直を片手ずつで示しつつ、手首から先をさらに直角に曲げている。折れたプロペラのようなポーズだ。視線は虚空をとらえるように、瞳を中央にやや寄せ、片目だけ上目づかい。何かを見ているようで、実は何も見ていないといった感じ。

Aほんの少し過去――恐竜のアリス ティラノザウルスの顔がアリスのように見える。しかし、踊っているのか、単に歩いているだけなのかは、はっきりしない。恐竜の視線は虚空をとらえている。手前の大地が崖だ。遠景に原野。川と湖の向こうには火山の噴火が見える。

Bほんの少し未来――ロボットのアリス 金色のボディで、チューブ状の手足をもって、3体そろって同じアリスの顔をして踊っているロボット。

Cもう少し過去――ヒドラの体をもちゾウリムシの顔をもつアリス 顕微鏡で見た世界の中で、ホシミドロに付着して通りすがりのゾウリムシを捕えようとしているヒドラの断面図という設定で、手足をくねらせて踊っているポーズを象らせている。もちろん、顔の役目をしているゾウリムシはアリスにそっくりだ。 

Dもう少し未来――スターチャイルドのアリス 宇宙空間にアリス似の赤ん坊のような幻が浮かんでいる。右上にオレンジ色の惑星があり、この下に、その惑星より大きな赤ん坊。ただし、背景の星星が透けて見えるほど、かすかなものであり、後頭部から背中にかけての部分は完全に消えている。オレンジ色の惑星からの反射光が赤ん坊の顔や胸を照らしていて、まったくの幻ではないことを暗示している。 

Eはるかな過去――生まれたばかりの星雲のアリス 宇宙空間の中に生まれた、渦巻き星雲と球状星雲が、アリスの二重まぶたの目と、エクボが左右からはさみこむ口に見えるもの。よけいなものをすべて取り去って記号化された顔である。 

Fはるかな未来――膨張した宇宙に広がる星雲のアリス アリスの目と口に見えていた渦巻き星雲と球状星雲が、遠く離れてしまったところ。もうアリスには似てもいない。小さく描かれた星雲の形が、それぞれ、一つ前の画面の記号化された図に似ているだけである。

Gふたたび いま えいえんの いま――ネズミ型シナモンのアリス ネズミの耳をかたどった帽子をかぶって、尻尾をつけたネズミ型シナモンのダンサーとして踊るアリス。なぜネコ型シナモンのアリスがネズミ型シナモンを演じているのだろうか。

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