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第14岩窟 レプリカ型シナモンの死

黒月樹人 (KULOTSUKI Kinohito)

第14岩窟 [名]レプリカ型シナモンの死 [色]オーロラ [岩]オパル縞状流紋岩

巨大な四角い黒石の上に、うつ伏せで横たわり、石の一辺から片腕を伸ばして、他のシナモンを吊り下げている、レプリカ型シナモン。

今、まさに死ぬまえの、最後の力をふりしぼって、吊り下がっているシナモンを引き上げようとしているところだ。

その手にしか、命がつながっていないシナモンは、それまで、おのれの命をねらっていた相手だ。ここで手を離せば、決着がつく。レプリカ型シナモンが生き残って、他のシナモンは落ちて、砕けて、死んでしまう。だが、そうしたところで、レプリカ型シナモンの命は、あと数分しか続かないということを知っていた。

もう落とされるしかないと思っていたシナモンは、無理やり引き上げられて、最後はきちんと、自分の両手で、黒石の縁にしがみつき、ようやく、上面に上がってみると、レプリカ型シナモンは、力のすべてを出しつくして、ただ座り込んで、これだけのことを語り、そして、静かに目を閉じた。

[解]この短かな命

   記憶のしずくの濃さ

   深宇宙のガス星雲の輝き

   ドールとの甘いキス

   すべてはターメリックのフレア

   燃え上がっては

   やがて消える

 

この詩を読んで、ぼくは、とつぜん立ちすくんで、泣いてしまう。

なぜだか分からない。もう、もとにはもどらない。ヒイロカキアカが背中をさすってくれる。

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