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思考言語

黒月樹人 (KULOTSUKI Kinohito)

 思考言語という用語は、このパセリ惑星での、現在の文明では、あまり確かなものとはなっていない。すでにミームの視点が見出されているにもかかわらず、思考言語の視点は、あいかわらず忘れ去られたままである。

 思考言語の研究のため、ひとつは、障害をもつシナモンの中に、そこで通用している線形言語を使うことのできないにもかかわらず、多様な対応の反応を、身振りや手振りや、突発的な短い音の組み合わせで表現することから、何らかの思考が、そのシナモンの中で構成されているとみなせ、それを、原始的な思考言語と考える流れがある。

 もう一つの流れは、異なるシナモン間での、線形言語を利用しないコミュニケーションにおいて、それぞれのシナモンの中に、思考の塑像モデルのようなものが存在しているということが明らかであり、それらも、原始的な思考言語と考えられようとしている。

 ところが、そのような考察を行っている、線形言語もペラペラのシナモンたちですら、原始的と呼ばれている思考言語を根源に持っているのだということには、気づかれていない。ここでも、シナモンが、単なるバチルスであるということが、大きく影響している。シナモンたちは、相変わらず、自分たちがいかに大きな存在であるか、指導的な立場にいるかという、誤解の渦の中で、タツマキで飛ばされている状態に陥っているのだ。思考言語は、すでに、シナモンたちの文化の中で、まがうことのない、ミームの根を下ろしているのに、それに気がつかないというのは、古細菌のことを何億年も知らなかったのと、ほとんど同じ現象である。

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黒月樹人(treeman9621.com)「天国にいちばん近い町」より