ミームは繰り越し可能

黒月樹人 (KULOTSUKI Kinohito)

 「ミームは繰り越し可能」という、標語のような一文は、少し説明が必要であろう。

 たとえば、「死んでも、ミームは繰り越し可能」と言いかえれば、はるかに分かりやすい。このような考えの基盤には、輪廻転生の考えが潜んでいる。これを「考え」と呼んでよいのか「ほんとうのこと」とみなせばよいのか。これによって、すべてのことが、(写真から始まる一般の画像における)ネガとポジのように、がらっと変わる。

 このことについて、数多くの資料にあたってきた。それこそ、何十年も。ところで、この小説を書く、少し前の、最近、イアン・スティーヴンソンが書いた「前世を記憶する子供たち2」の翻訳本が出版された。イアン・スティーヴンソンは、この分野における先駆者でもあり、現役の研究者である。彼の調査は科学者としての立場をつらぬいたものだし、著作の表現にも気負ったところがなく、ほんとうに、科学論文を読んでいるように思える。このタイトルの一作目である「前世を記憶する子供たち」はロングセラーとなっており、「南アジアなど8文化圏の生まれ変わり事例を多数紹介」したが、今回の「前世を記憶する子供たち2」では、「ヨーロッパ11カ国から厳選した、40例の驚くべき前世の記憶を詳細に報告」している。ほんとうに、よい仕事をしてくださっておられる。

ぼくの小説は、もちろん、見てきたような嘘のしっくいで塗り固めているのだが、幾つかのエピソードの根幹は、ほんとうのことである。それらを、ジョークの離散被覆で、覆い隠しているわけだ。何と罪深いことか。

ぼくの小説で、笑いころげた人も、こっそり涙を流してくれた人も、少し時間をおいて、ぜひ、ほんとうのことをまじめに調べて書いてある、「前世を記憶する子供たち2」などを読んでほしい。きっと、死にそこなって幽体離脱してから、この世界に戻ってこなくても、人生観ががらりと変わって、もっともっと有意義に生きられるようになりますよ。ぼくだって、そうだったのだから、保障します。あぁ、ぼくなんかが言っても、あてにならないか。

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黒月樹人(treeman9621.com)「天国にいちばん近い町」より