ブラウン運動

黒月樹人 (KULOTSUKI Kinohito)

 花粉などの微粒子が、水の分子の衝突により、不規則運動する現象。ロバート・ブラウンが発見した(1827年もしくは1828年、この数字は文献によって異なることがあるが、どっちでも、たいして変わらない)。たしか、アインシュタインは、この現象の理論的な根拠を示したことにより、ノーベル物理学賞を受賞したのではなかったか。他の研究については、それを理解できる選考委員が、まったく選定されていなかったと思われる。また、他の研究が、正しいという根拠を示す現象も、ほとんど観測されていなかったためでもあろう。ぼくが、このようにアインシュタインの肩をもつからといって、アインシュタインの研究を全て信じ込むのは危険である。なかなかうまくヒッカケテいると思えるような、ジョークの一種のような論理展開の理論もあって、アインシュタイン自身が、おのれの生み出した理論にだまされているのではないかとも、思えてしまうものがある。かつて、ぼくは某学会で、地震波における表面波の理論が、ただの仮想であって、S波(横波)が、傾斜地層によって、光がレンズで集められるように、エネルギーを集めさえすれば、このような、振幅が異常に大きな波が簡単に生まれるということを発表したが、そのとき反論された方々の根拠は、表面波の理論を生み出した科学者の名前が偉大であるから間違っているはずがないというようなものであり、ぼくは腹のそこで笑いながら、ですから、ここの仮定で、鉛直下方に波の振幅が減衰するという条件を導入する根拠が何も示されていなくて、単なる仮定の下で生み出された理論なのですよ、と説明したのだけれど、科学者の名前の威光を、単に信じているだけの人間は、すでに論理的に議論するという能力が失われているということが、(ぼくには)分かっただけであった。表面波は、地震の被害予測においても、重要な問題である。S波が傾斜地層で多重反射を起こし、振幅の位相を合わせることによって表面波とも呼ばれる、大きな振幅の波になるという現象は、このような波を観測された、古い論文を調べていて気がついたのだが、その論文では実験的に観測されていて、A地点で起振して(ちいさな人工地震を起こし)B地点で観測するときには表面波が生ずるけれども、その逆に、B地点で起振してA地点で観測するときには、振幅の大きな波は発生しないということが、巧みに隠されていて、実験したことが書かれているのに、一方の結果だけしか説明していないのだった。ぼくは、なぜそのようになるかと言うことを、コンピュータシミュレーションによっても説明したが、それらの新事実を受け入れられる科学者は、ほとんどいなかったようである。また、表面波について発表している他の研究者の観測データについて、その逆向きの観測結果を示してほしいと質問したことがあるが、発表時に約束してくれたにもかかわらず、その研究者は、なんだかんだ理由をつけて、それを明らかにすることを拒み続けた。まあ、逆位置からの観測では、表面波が発生しないということは、当時のぼくしか知らないことであったから、対応できなかったのもしかたがない。この世界での仕事は、リストラという嵐の中で逃げることに精一杯だったので、その後の展開については分からない。あいかわらず、理論そのものについて考える能力が失われた科学者たちの多くは、理論そのものではなく、その理論を生み出した科学者の、名前の威光を信じているだけである。なんとはなく、哀れである。

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黒月樹人(treeman9621.com)「天国にいちばん近い町」より