黒月樹人闘病記(f2)病院食「検査の結果、点滴は意味がない!」

黒月樹人(KULOTSUKI Kinohito 本名◇田中 毅 @黒月解析研究所)

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 ダルマ先生

 入院中に記録していたメモに、次のように記されています。

 8月28日(日)8時20分 朝食が来る。断食モードに入る。クスリは飲む。
 (中略)
 8月29日(月)8時30分 ウマノスギゴケ先生(私の担当主治医、内科)と話し合う。
 (中略)
 同12時00分 まだ重湯A(いやがらせか、ジョーク)。断食中。薬は飲む。
 (中略)
 同14時30分 栄養士さん現わる。ギロンす。(36.7℃)

 私は、このようなメモを細かく記録していました。
 トイレの時刻と、看護師さんが入れ替わってからの回数、そのとき、いつも体温を測るようにしていましたので、そのデータ。看護師さんが計測する血糖値(3度の食事前)、血圧(看護師さんが変わるごとに)、散歩などの行動のメモ、などなどです。
 また、睡眠としてついやすことのできた時刻と、それによる睡眠時間なども記録し、体温の変化についてのグラフを描く中で、ひとつの重要な問題点を見つけました。
 それはまだウマノスギゴケ先生が土日の休暇中のことでした。
 8月27日(土)の夜の記録によれば、20時から21時は本を読んでいます。その最後のあたり、20時53分にトイレ(小)(7回目)(36.4℃)とありますから、この後睡眠モードに入ったようです。
 ところが、22時25分にトイレ(小)(8回目)(36.5℃)と記録されています。
 このとき、私は、一瞬にして問題点を把握し、ナースコールのボタンを押して、その日の夜の看護師さんを呼び出しました。
 隣で他の患者さんが眠っていることは知っていましたが、出来るだけ小さな声で、私は、その女の看護師さんに、このときの問題点を、まるで、叫ぶように語りました。
 「9時に眠って10時半に、膀胱におしっこがたまって起こされる。わずか1時間半だ。これが夜じゅう繰り返される。睡眠の時間は細切れ。これって、拷問じゃないのか。
 そういう拷問があるのだ。眠り始めるや、無理やり起こされ、深い睡眠に決して入らせない。すると、やがて、精神に耐えがたい苦痛を覚え、深い眠りへ入りたいがため、かくしてあった情報を話してしまうというものだ。
 なぜだか分かるか。この点滴のせいだ。
 あなたには、これを外す権限はないかもしれない。それができる人へ、この問題点をあげてほしい。」
 ここでは、ここを読む人のために、少し表現を補いましたが、ほぼ、このような内容を、もっと短い言葉で、小さいけれど、声を荒げて、彼女に伝えたのです。
 彼女は
 「報告してきます」
と言って部屋から出てゆき、少しして戻って来た。
 「当直の先生が、今救急の患者さんを診ているので、すぐには来れないということですが、それが終わったら来てもらいます。」
 的確な判断と行動でした。
 やがて、私は彼女から呼ばれたとき、ここでは他の患者さんの迷惑になるので、談話室へと移動することにした。
 そこへ移動したとき、現れたのがダルマ先生。
 彼は、丸刈り頭に無精ひげ、身体も筋肉質ながら、どちらかというと丸みがある。
 だから、ダルマ和尚に似ていると、私は感じ取った。本名は記録してあるが、もちろん、ここでは出さない。
 談話室で、この問題点を説明しました。
 「眠っている間も点滴を続けていることにより、膀胱に小便がたまって、ほぼ一時間半ごとに、強制的に起こされる。これでは拷問だし、深い睡眠に入れない。
 よって、身体の回復機能が正常に働かない。
 だから、夜眠るときは、点滴を外してもらいたい。」
 ダルマ先生は理解力をもつ、一人の独立した医師でした。
 彼の判断は、次のように語られました。
 「分かりました。夜21時から翌朝6時まで、点滴はなし、ということにしましょう。」

 この日の記録として、「23時07分 点滴をとめる」とあります。
 談話室で話し合ったのが22時の後半だったので、直ちに外してもらったということになります。
 ところが、この後の記録によると、28日(日)の、0時48分、3時00分、4時32分(起床する)の3回、トイレ(小)に向かっています。これらのときの体温も、36.6℃、36.5℃、36.6℃と、日中に活動しているときのレベルです。
 私が深い睡眠に入ったあと目覚めた時には、かなり長い間、低い体温が続きます。まさに、34度台になっているのです。
 ところが、このときの体温は、すべて36度台でした。
 これは、正常な深い睡眠に、一度も入っていないことを意味しています。
 この問題点を分析し、ダルマ先生に説明して、21時の消灯時刻までではなく、少なくとも20時には点滴を止めること要求しました。
 それは認められましたが、それでも私は深い睡眠というものを、この病院で体験することはありませんでした。

 ウマノスギゴケ先生

 そのような取り組みがあった少しあとの日、ウマノスギゴケ先生(私の主治医、内科、身体が細く、背がとても高い(1m90近くある))が、私のベッドのところにやって来て、検査の結果をふまえ、次のように語りました。
 「この結果により、点滴は意味がないということが分かりました。
 今後は、点滴を止め、抗生物質の薬を飲んでもらいます。」
 意味の無い点滴のため、こんなに苦しんできたのか、という怒りを、私はどこかに、ほうむりさり、点滴のために、左手の手首付近にさしこまれていた注射針が、およそ2cmも、針を血管内に差し込まれていたということを観察しました。
 これでようやく、フォーリングスカイズ(アメリカのSFテレビドラマ)の(異星人たちが地球人の子供の中にとりつけた)ハーネス(実は生物)と、おさらばできる。

 あとがき

 重湯Aについての物語を記そうとしていましたが、その前にあった、「点滴物語」をまとめてしまいました。
 次回は重湯Aが止められてゆく過程について説明します。
 (Written by KLOTSUKI Kinohito, September 22, 2016)

 

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